ズームアップ 第二青函多用途トンネル構想研究会座長 石井 吉春氏

2018年12月13日 18時00分

 6月に道内関係者の第二青函多用途トンネル構想研究会がまとめた第2青函トンネル整備構想。自動車が走行し年間730億円の道内消費を生む。座長の石井吉春北大公共政策大学院特任教授は「誘発投資に経済効果がある」と新たな人流が本道経済の自立につながると説く。(建設・行政部 松藤 岳記者)

■自動車走る第2青函を

 ―構想作成の経緯は。

 JAPIC(日本プロジェクト産業協議会)が2017年にまとめた鉄道貨物・カートレインと無人自動車走行トンネルの構想がきっかけ。貨物と新幹線の分離で共用走行問題の解決につながるが、基本的には今ある貨物列車のルートを置き換えるだけなので新たな経済効果が望めない。

 北海道への経済効果を高めるには自動車で自由に往来できるトンネルが必要では、との問題意識を抱えていた。トラック運賃も福岡と札幌は東京までほぼ同じ距離だが6万円くらい輸送料が違う。それが実質的には道側の負担、ハンディキャップになっている。

 現在の技術なら工期も掘削延長も短縮でき、トンネルだけなら7000億円程度で建設できると試算した。本四架橋で3本の橋に2兆円以上を投じたことを踏まえればおかしい金額ではない。

 実現可能なら北海道にとって大きな追い風になる。北海道経済の自立を目指すのであれば、地域間競争の基礎的な交通基盤を放置しておくわけにはいかない。

 ―整備資金はどうするのか。

 民間資金を活用したPFI方式による整備を前提に考えている。青函航路のフェリー料金のおよそ半分の金額を通行料金として計算すれば、およそ50年で整備資金の回収が可能だ。

 これはインフラとしては優秀な投資だが、民間だと50年のファイナンスを拠出できる企業はない。出せてもせいぜい20―30年分だけで、常に経営の下振れリスクを背負い続けることになる。

 だから官側が資本金の拠出や、ローンの負担など、公共事業として適切な形でリスクを分担し、超過収益で負担を埋め合わせる形が望ましい。また、新トンネルに接続するアクセス道路などネットワーク整備も必要だがここにも公的関与が不可欠だ。

■新たな「人流」が経済効果生む

 ―整備による経済効果は。

 10年で建設すれば毎年700億円くらいの事業費が投じられるが、これはあくまでベース。むしろ、トンネル開通によって誘発される誘発投資が重要だ。物流はあくまでトラック輸送のコストを縮減する効果なので、実際には人流こそ新たに経済効果を生み出す。

 本四架橋で本州から四国を訪れる人が5割増になった。第2青函開通で観光客が30―50%増えても不思議はない。観光消費効果は物流の運賃削減効果より大きくなる可能性すらある。

 来道者が増えれば大型の民間設備投資も誘発される。新幹線駅の開業で新駅周辺の開発が進んでいることを見れば、交通がもたらすインパクトの大きさが分かるだろう。

 共用走行などの問題は早期に解決しなければならないが、それだけのためにトンネルを掘るのは早計。道内の運輸業はピークである農産品の出荷時期に合わせた設備容量となっているため、稼働率が他の地域に比べて悪い。

 現地加工や冷蔵貯蔵で出荷時期の平準化を図るなど、物流が変わらなければならない点もJR北海道の路線維持問題から見えてきた。まず、短期的に解決すべき課題として道内物流を再考し、中長期的なステップとして第2青函を捉えなければ。残された最後の投資余力はトータルで経済効果が生み出せるものに使うべきだ。

 石井 吉春(いしい・よしはる)1954年1月17日生まれ、仙台市出身。76年3月一橋大商学部卒。同4月北海道東北開発公庫入庫。2003年6月日本政策投資銀行四国支店長。05年4月から北大公共政策大学院教授、17年4月から現職。

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