冬になると、体に冷えを感じ、つらい思いをする人が多くなります。そもそも、冷えとはどういうものなのでしょうか?体の熱は、細胞の代謝活動の結果として生じるものです。自動車のエンジンをかけると、エンジンや車体が熱を帯びることに例えることができます。
体で熱を作る主な臓器は、筋肉、肝臓、脳などです。熱を作る臓器を血液が通過すると、血液が温められます。こうして熱を持った血液は、静脈を経て、体の中心にある心臓に集まってきます。
なので、心臓の中の血液は体の中で一番高い温度(37℃)に保たれることになります。そして、この温かい血液は、心臓によって全身に送り出され、それによって体全体は温められることになるのです。
ですから、体に冷えを感じた時は、その部分の血液循環が低下していることを意味します。冷えは循環不全による症状なのです。手足に冷えを感じるときは、とりわけ、足先や指先の血管が締まって、血流量が低下しているために起こります。
なぜ、血管が締まるのかというと、気温が低い時に、手足に流れた血液の熱が、空気中に放散して体温が下がってしまうのを防ぐためです。手足の温度は下がりますが、体の真ん中の温度は下がらないで維持できるのです。腰、ひざなど、冬に冷えを感じやすい場所は、やはり血流が低下しているのです。ですから、もともと血流が多い頭の中や、胸などに冷えを感じることはまれなのです。
というわけで、冷え対策の基本は、血流の改善ということになります。冷えた手足にマッサージなどで刺激を加えると、血管が開いて血流が改善します。自ら軽く体操をして手足の血行を改善するのもいい方法です。手足から熱の放散を防ぐために血管が締まるのですから、手袋や厚目の靴下をはめて、熱の放散を防ぐと、血管は締まりにくくなります。
昔から、しょうがは、体を温めるといいますが、これはしょうがの成分が血管を開く作用を持っているからです。食べ物にしょうがを積極的に取り入れると冷え対策として有効なのです。しょうが湯なんてお勧めです。逆に、お酒は血管を開きすぎるので、血行は改善しますが、同時に大量の熱が体から失われます。なので、お酒が覚めかけたころに、逆に冷えが強くなってしまう傾向があります。冷え対策にお酒というのはお勧めできません。
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)