建設新聞で読み解く あのときの札幌

シリーズ「建設新聞で読み解く あのときの札幌」

 1960、70年代の札幌では、ダイナミックな建設投資が行われ、今日の発展につながる多くの都市施設が整備されました。この連載は、北海道建設新聞の記事とともに当時の様子を振り返える「e-kensin」限定の企画です。

第9回「1972年冬季五輪〈3大競技場〉」

2018年12月23日 07時00分

 札幌冬季五輪で整備された14の競技場のうち、大倉山ジャンプ、真駒内スピードスケート、真駒内屋内スケートの3つの施設は「3大競技場」といわれ、北海道開発局営繕部が発注業務などを担った。五輪開催は1972年2月だが、71年2月の札幌国際冬季スポーツ大会(プレオリンピック)でも使われたため、準備は急ピッチで進められた。完成までの経緯を見てみる。

 ■「秋口までに発注」

 第8回で紹介した苫小牧のスピードスケート補助競技場と、藤野リュージュ競技場(予備コース)の2施設は、選手強化を目的に1967年に着工したが、他の競技場の発注は68年度以降となる。

 68年1月24日付を見ると、68年度の五輪予算は総額13億54000万円に決まったとあり、3施設には2億9000万円が措置されている。国が施工する4施設のうち、3大競技場は、五輪を所管する文部省から建設省を経て、北海道開発局営繕部に工事の発注業務と監理が委託された。

 3月4日付には湯沢誠営繕部長の談話が載っており、競技場ごとの予算内訳として、真駒内屋内スケート1億2970万6000円、真駒内スピードスケート6763万1000円、大倉山ジャンプ4188万4000円を提示。「秋口には本工事の一部に着手したい」と語り、札幌冬季オリンピック管理事務所(「オリンピック施設営繕事務所」として新設)の設置も明らかにした。

工事発注の見通しを報じた68年3月4日(上)と同年4月19日付※クリックで拡大

 年度が変って同年4月、開発局の遊佐志治磨局長は「真駒内屋内スケート場など三つの施設、総額三十七億円を、国庫債務負担で、秋口までに発注する」(68年4月19日付)と記者会見で話している。

 ■工事発注の遅れ

 68年5月9日付に、文部省が「三施設の設計外注」の記事が載る。大倉山ジャンプ競技場は坂倉準三建築研究所と北海道開発コンサルタントの2者、真駒内スピードスケート競技場が前川国男建築設計事務所、真駒内屋内スケート競技場が中山克己建築設計事務所。正式契約を同年5月末に行い、秋ごろ完了する予定とし、開発局営繕部による工事着工は「10月を予定」と伝える。

文部省による「設計外注」(68年5月9日付)

 ただ、2カ月後の「土曜インタビュー」(同年7月13日付)に登場したオリンピック施設営繕事務所の佐藤一夫所長は、次のように答えている。

 「四十六年二月にプレ・オリンピツクがありますから、そのときまでに競技だけは最小限度行なえるようにしなければなりません」「まず四十四年度末までに、大倉山ジヤンプ台は六五㌫、屋外スケート場は四五㌫、屋内スケート場は四〇㌫の工事量を消化してしまう方針です。そしてあとの残りが四十五年度に消化します」と工程を示した上で、「いまのところ予定よりもちよつと遅れてまして…」「なにがなんでも年度内には発注します。せめて契約だけでも今秋にやるつもりです」と話している。その後の「まだ文部省の方から連絡がありませんけど、きようあすにでも設計を外注するはずです」の言葉からは、インタビューの時点で、設計の契約が行われていないことが分かる。

 契約がどのような要因で遅れたのか。本紙の記事を見つけることができなかったが、それに伴い工事の発注は、翌年3月にずれ込むことになる。

68年7月13日付の「土曜インタビュー」。オリンピック施設営繕事務所の佐藤所長が発注方針などについて語った※クリックで拡大

 ■「年度内」に成契

 開発局営繕部は69年3月1日、3競技場の工事を同月22日入札で発注した。大倉山ジャンプが主体(土木・建築)と電気の2分割、真駒内スピードスケートが主体、電気、暖房、衛生、通信の5分割、真駒内屋内スケートが主体、電気、空調、衛生、通信の5分割で計12件。3月3日に図面説明が行われている。

 22日の当日、主体の3件はそれぞれ5回入札されたが、いずれも予定価格を上回った。24日付の見出しは「五輪主体、随交へ」。一方、設備関連は成契に至ったものの、【四落】【四超随】【五超随】などが続出し、尋常な状況でないことが分かる。

入札の結果を伝える69年3月24日付※クリックで拡大

 28日、主体3件は成契となり、68年度内契約に何とかこぎ着けたが、問題を残す結果になった。

主体の成契は69年3月28日となった(同年4月1日付)

※クリックで拡大

 4月8日付の「時評」では、「入札過程をみると、業者の積算と役所の積算にべらぼうな差があるのにおどろかされる」と問題提起。大幅なダンピングの末、随交に移ったが、成契額はさらにそれを下回るものとなったことを伝えた。

 その上で、建築技術などが「比較的未開拓」な地下鉄や超高層ビルといった工事よりも「はるかに未開拓」と、五輪工事の特性を指摘。「当然のことながら業者は最悪の状態になつた場合のことまで必要以上に考慮して積算することになるわけだが、そうした業者の神経の使いかたを役所がはたして考慮したであろうか。ただ事務的にこれはいくら、これはいくらと処理したといえばいいすぎであろうか」と記している。

「五輪工事の問題点」と題して報じた69年4月8日付の「時評」※クリックで拡大

 ■待望の着工

 札幌市や札幌オリンピック冬季大会組織委員会が施工を担当する施設と比べると後れを取っていた3大競技場だが、69年5月2日、合同の起工式が行われ、待望の着工を迎える。

 開会式の会場にもなった真駒内スピードスケート競技場は、道立森林公園の丘陵地を利用し、競技場場全体をできるだけ掘り下げて築造。住宅地への影響を最小限にとどめるよう配慮した。

丘陵地を掘り下げて配置した真駒内スピードスケート競技場
(18年10月撮影)

 メインスタンドがRC一部SRC造、2階建てで、指令塔などを合わせ延べ4332m²の大きさ。収容人数は、メインスタンド(3789m²)が7600人、土盛りのバックスタンド(1万4980m²)が4万1700人の計4万9300人。アリーナ部分は1周400m、幅16mのリンクで、本コース2本と予備コースに1本を設けた。このほか、プロパンガス方式の聖火台、電光掲示板、スピーカータワー、高さ28~38mの照明塔4基などの付帯施設を設置した。

 真駒内屋内スケート競技場は、フィギュア、アイスホッケーだけでなく、大会の最後を飾る閉会式の会場でもある。スピードスケート競技場とは、道路をはさんで直線軸上に配置した。直径103mの円形施設で、RC造、地下1地上3階、延べ1万8955m²の規模。外周柱上に正12角形の大屋根を乗せたユニークな建物だ。収容人数は固定席6018人、仮設(リンク周り)864人、立ち見席4032人の計1万914人。アリーナは30×60mのパイピンクリンクとした。

円形の外観が目を引く施設真駒内屋内スケート競技場(18年10月撮影)

 大倉山ジャンプ競技場は、14の競技場のうち、唯一既存の施設を改造して整備された。前身となるシャンツェ(ジャンプ台)は、大倉財閥の大倉喜七郎氏が私財を投じて1931年に完成させた60m級。札幌市に寄贈された際、市が「大倉シャンツェ」と命名した。その後、何度か改造が加えられたが、五輪時の改造では、アプローチ(助走路)上部の乱気流をなくすため、アプローチのセンターラインを3.35度北に寄せ、アプローチ全体を約7m低くした。

 アプローチは最大斜度35度で全長115m。ランディングバーン(着地斜面)は最大斜度39度で岩盤を切り土して築造した。スタンドはA、B、Cの3つを設け、収容人数は計4万6700人。このほか、競技運営本部(RC造、4階、延べ753m²)を建設した。

大倉山ジャンプ競技場は、国際スキー連盟(FIS)の大幅なルール改正に合わせ、94~99年度に総事業費115億円を投じる全面リニューアルが実施された(18年10月撮影)

 ■合同落成式を挙行

 3つの競技場は、真駒内スピードスケートと大倉山ジャンプが70年11月、真駒内屋内スケートが70年12月にそれぞれ完成。同月、文部省、北海道開発庁、札幌オリンピック冬季大会組織委員会の3者による合同落成式が真駒内屋内スケート競技場で行われた。

 国施工の4施設のうち、射撃とスキー距離の複合競技が行われた真駒内バイアスロン競技場は、西岡にある陸上自衛隊真駒内演習場内に整備されたため、工事発注や監理を札幌防衛施設局が担った。

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