十勝の景気は農業と建設業が鍵を握る。
2年前の台風災害では全耕地面積の約1割が被災したが、帯広開建が河川掘削土を無償提供するなどして農業インフラが回復。「夜遅くまで設計した農業用排水路が無事に完成したのを見て感慨深かった」という地元技術者の声も聞いた。
災復工事が落ち着いた7月末、北海道命名150年事業として帯広建設業協会と帯広二建会による、十勝の建設史を振り返る企画展が帯広市内のとかちプラザで開かれた。
開催した2日間の来場者は1500人。VR(仮想現実)などゲーム感覚で建設業の面白さを楽しんでもらうコーナーを用意したこともあり、家族連れの姿を多く見掛けた。「うっそうとした森と沼地を切り開き、豊かな農業基盤ができたからこそ今の十勝がある。こうした建設業の努力を子どもたちにも知ってもらいたい」と話す二建会のメンバーの言葉が印象的だった。
そうした子どもたちに建設業の魅力を伝えるインターンシップでは、以前に比べて建設業に興味を持つ生徒が少しだけ増えた気がした。
清水町で中学校の職業体験を取材したときのこと。引率した教諭が「町内の災害復旧工事を見て建設業に興味を持ち、工業高校に進んだ生徒がいます」と話してくれた。彼らは地域にとって希望の光だ。
3年前、職業訓練に挑んだ型枠大工の姿を追い掛けて連載記事を書いた。今でも辞めずに技能を磨いているという便りを耳にした。農業用施設の仕事などで忙しいという。
人が経済をつくり、経済が地域の暮らしを豊かにする。
台風以前の姿に戻りつつある十勝で、それまでとは異なる潮目の変化を感じた1年だった。(帯広支社・石橋 明浩)
北見、網走、帯広、釧路の支社局で取材活動する記者9人がこの1年の印象的な出来事を振り返ります。