国土交通省北海道局は21日、2019年度予算案の北海道開発予算を公表した。一般公共事業費に当たる北海道開発事業費は、国費ベースで前年度当初を約803億円、14.7%上回る6249億8600万円を計上。防災・減災、国土強靱(きょうじん)化に関わる緊急対策など臨時・特別措置で703億8500万円を積み増し、08年度の予算水準を突破。この措置で道路の法面対策や河道掘削、農業水利施設強化など重要インフラ点検結果に基づく災害対策を推進する。
■重要インフラを強靱化 道路2385億円、治水は27%増に
要求に当たって北海道局は最優先課題として「18年度北海道胆振東部地震等からの復旧・復興と防災・減災、国土強靱化」「アイヌ文化の復興等を促進するための『民族共生象徴空間(愛称・ウポポイ)』の具体化」の2点を掲げた。
さらに重点事項として「食料供給基地としての持続的発展」「『観光先進国』実現をリードする世界水準の観光地の形成」といった北海道総合開発計画に基づく取り組みや、アイヌ施策なども進める。
事業別に見ると、道路は、道路整備と道路環境整備合わせて9.5%増の2385億2500万円を積み上げた。臨時・特別の措置はこのうち182億6700万円で、重要インフラの点検結果に基づき法面や盛り土の強化、排水設置、橋梁耐震化、CCTVカメラや情報提供板の停電対策などを進める。
また、旭川紋別自動車道遠軽―瀬戸瀬間、深川留萌自動車道留萌大和田―留萌間、国道44号温根沼―根室間の19年度開通に向けた整備などを促進する。
治水は27%増の1112億6700万円で、うち184億6600万円が臨時・特別措置分。河道に繁茂した樹木の伐採や掘削、堤防かさ上げといった対策を施し、洪水への対策を図る。
19年度完成を目指し千歳川の5遊水地整備推進や、16年8月水害を受けて立ち上げた緊急治水対策プロジェクト最終年の仕上げとして十勝川、常呂川の河道掘削にも注力。直轄ダムは幾春別川総合開発新桂沢ダム、沙流川総合開発平取ダムの整備と雨竜川ダム再生調査を推進するほか、三笠ぽんべつダムの本体工事費を確保した。
農業農村整備は、13.8%増の872億8200万円で、農地大区画化、農業水利施設の保全・更新などを図る。また、このうち93億8400万円の臨時・特別枠はポンプ場など水利施設の非常時対応性能強化に充てられる。水産基盤整備は29.5%増の301億6000万円で、漁港岸壁耐震化、防波堤かさ上げなど波浪対策を推進する。
空港は17.7%増の187億5700万円でインバウンドの受け入れ強化に向け新千歳空港南側誘導路新設などの整備進展のほか、平行誘導路整備費も盛った。8.4%増、184億5500万円の港湾は、苫小牧港屋根付き岸壁整備や、函館、小樽港クルーズ船受け入れ体制強化に取り組む。
このほか、2・5倍と突出して伸びている海岸は白老町で20年4月開業を目指す民族共生象徴空間を保護する胆振海岸人工リーフ整備で増額。水道は、更新期に当たる浄水場の高度浄水処理施設整備で7割増になった。
道や市町村向けの交付金は、社会資本整備総合交付金が1.6%増の358億2400万円。防災・安全交付金については、重要インフラ強靱化に向け19.3%増の454億8900万円を確保した。 このほか、公共工事の施工時期平準化の取り組みを強化するため、17年度予算から設定している当初予算ゼロ国債は、284億3800万円を計上。道路関係に約236億円、河川関係に約40億円、水産基盤整備に約8億円の配分を見込む。
(解説) 臨時・特別措置で伸び
2019年度北海道開発事業費は、臨時・特別の措置により公共事業関係費全体が約1兆円増の6兆9099億円となったことで、約15%の伸びを見せた。18年7月豪雨や北海道胆振東部地震といった災害を踏まえた3カ年の重要インフラ緊急対策の2年目分が盛り込まれたことが大きな要因だ。
18年度2次補正予算についても重要インフラ緊急対策の1年目分やTPP・EPA対策経費として1196億7600万円を計上。17年度補正を大きく上回る規模で国土強靱(きょうじん)化などに予算が措置され、15カ月予算は国費で7446億円、前年度比16.7%増と大幅な伸びにつながった。
19年度当初予算でも突出した伸びを見せるのが治山治水で、治水に関しては27%増で1100億円台に乗せたが、緊急治水対策プロジェクトの最終年であることなど従来からの計画的な災害対策の積み重ねも大きい。また、近年の開発予算の増加を支えてきた農林水産基盤についても、漁港の耐震化などで16.5%増となった。
国土交通省は防災・減災対策の計画的な推進に向けた個別補助を拡充・新設するため、社会資本整備総合交付金を約2%取り崩した。ただし本道は前年度水準を維持し、従来通りに道路や河川整備への活用が可能だ。
さらに災害復旧費も開発予算とは別枠で計上されており、19年度の執行額は1000億円程 度が見込まれている。こうした大幅な予算増で懸念されるのが、資機材と人員の不足や偏りに起因する発注不順などの課題だ。また3カ年の緊急対策が終わる21年度予算は大きく落ち込む恐れがある。
一方で、臨時・特別の措置を除いた通常予算が1.8%増と18年度の伸び率を0.2ポイント上回ったことも特筆できる。第8期北海道総合開発計画に基づく食と観光の推進や安全安心な社会基盤整備といった基本方針を守り、労務単価など工事費上昇分を加味した予算を確保した形だ。
発注者・受注者双方が総力を挙げて本道のインフラ強靱化を推進しつつ、開発予算の基本的枠組みを堅持していく必要があるだろう。(建設・行政部 松藤 岳記者)