栗山建設、若手商工業者が施設開発・運営 住民生活や観光を支援へ
新冠町内の商業と建設業が店舗の開発・運営でタッグを組み、道の駅サラブレッドロード新冠の隣に、肉や野菜、魚、パンを販売する「にいかっぷキッチン」を開業した。キーワードは、業種を超えた「助け合い」。住民生活や観光を支える新拠点として期待されている。
2016年、町内唯一の生鮮食料品店だったAコープ新冠店が閉店。高齢者を中心に買い物が不便な状態が続いていた。4月には、室蘭開建が整備してきた日高厚賀ICが開業。現在は仮称・新冠ICを施工中で、観光客の受け入れ体制整備も喫緊の課題にあった。
そこで、鮮魚販売の「リーズン」を経営する加藤正仁さんら町内の若手商工業者が、Aコープ跡を活用した食料品店の開業を決意。施設整備を熟知した町内の栗山建設と手を組み、加藤さんが代表となって施設運営会社「合同会社ホープフル」を5月に立ち上げた。
中央町1の20にあるS造、平屋のAコープ跡は町内事業者が取得し、国道235号側の半分でセイコーマートを営業。ホープフルは残りの区画250m²を借り、4分割してテナントへ貸し出す。
精肉販売の「喜一郎ミート」、町内が馬産地であることにちなみサラブレッドの排せつ物を堆肥にして育てた野菜などを提供する「ナンモダ百貨新冠本店」が入居し、リーズンも前浜の魚介類を取りそろえる。社会福祉法人新冠ほくと園が障害者就労支援としてパンや菓子を製造・販売する「みると」はJR新冠駅付近から移転した。
8月から進めてきた施設整備は、外装を栗山建設、内装を町内の草野住建工業などが担った。
各店舗は地元産品を生かした商品開発にも精を出し、7日に開業。初日は大雪に見舞われたが、待ち望んでいた大勢の町民らでにぎわった。
町内各地から道の駅までコミュニティーバスが運行しており、山間部に住む自家用車のない高齢者には特に便利になった。品ぞろえは町外の大型店にかなわないが、単身も多い高齢者世帯で大量の商品は必要ない。米や調味料は、従来から町内にあるコンビニエンスストアで調達できる。加藤さんは「必要以上の商品を抱え込まず店舗間で連携するのが重要」と説く。
各店の経営持続性も不可欠だ。町の人口は5500人余り。モノを売る商業、店を建てる建設業、そして各種制度に詳しい行政で結束し「狭い町だからこそ各自の得意分野で連携できる」と加藤さんは話す。
にいかっぷキッチンの次なる目標は、日高管内の「観光拠点」。高校や大学と提携して商品開発や人材育成につなげるチャレンジショップも構想する。
開業で見えた各店舗の反省点はこの冬で入念に改善し、加藤さんは「10連休の来春に向けて力をためていきたい」と意気込む。
希望を意味する運営会社の名は、中央競馬の2歳GⅠ競走「ホープフルステークス」に由来。若駒のように無限の可能性を秘めた新拠点が、地域の期待を背に駆け出した。