震災乗り越え復興、飛躍へ 商機を生かし経済活性化を

2019年01月03日 08時00分

 震度7を記録した北海道胆振東部地震と、道内全域にわたる大規模停電(ブラックアウト)の発生から間もなく4カ月。大きな打撃を受けた本道経済だが、復興への歩みは着実に進んでいる。震災前の状況を取り戻すだけでなく、逆境を好機としてさらなる飛躍を遂げられるのか。震災後のさまざまな取り組みなどからビジネスチャンスをつかむことが、2019年の使命になる。

 甚大な被害に負けず 元気を国内外へアピール

 地震とブラックアウトは本道経済に甚大な被害をもたらした。道は商工関連の被害額を、地震による建築・設備や商品への被害で120億円、停電による商品や原材料廃棄などで136億円と推計。さらに、停電により営業ができずに生じた売り上げや出荷への影響額は1318億円に上るとした。

 観光分野での被害も深刻。地震が観光施設に直接的なダメージを与えただけでなく、震災後に宿泊施設や観光客向け交通機関でキャンセルが相次いだ。

 道の発表によると、観光施設の被害は266件で2億5300万円。宿泊施設のキャンセルはおよそ115万人泊に上り、交通費や飲食・土産物消費などを含めた観光消費の影響額は約356億円になると試算した。

 被害状況が明るみになる一方で、復興に向けたさまざまな取り組みが始まった。

観光客が戻りつつある赤れんが庁舎

 道は発災から約3週間後に878億円規模の復旧・復興対策を発表した。追加分として打ち出した対策を含めた総額は1133億円。電力需給の逼迫(ひっぱく)などによる産業被害からの復興に485億円、食と観光の早急な需要回復に5億円を計上した。

 産業復興への取り組みとしては、道をはじめとする行政機関と経済・産業団体、金融機関などが参画する緊急経済対策官民連携協議会を設置。地震で大きな影響を受けた中小企業や農林漁業者、観光事業者などの活動支援に向け、風評被害の払拭(ふっしょく)、産業基盤回復、経営再建、経済の成長軌道化について意見交換する場とした。

 18年9月末に開かれた初会合で、参加した約60の団体・企業が、それぞれの取り組みなど情報の共有をした。官民共同メッセージを採択。被災地以外の大部分で、インフラ施設や交通機能が日常生活に支障がない程度まで回復していることを、国内外に向けてアピールした。

 産業復興対策の中で重要な位置付けとなっているのが、中小企業の復旧・復興に向けた資金需要への支援だ。災害復旧に向けた経営環境変化対応貸付の枠組みで、地震被害により経営に影響を受けた道内の中小企業などを対象に、資金繰り支援に着手した。信用保証料に対する割引や補助制度も設け、企業の負担軽減を図っている。

ふっこう割は観光需要回復策の目玉だ(道観光振興機構のホームページから)

 旅行割引制度を導入 G20で食、観光に弾み期待

 観光被害への対応も進む。道は国、道観光振興機構、民間事業者と連携し、観光復興キャンペーン「元気です北海道」の本格展開に注力している。

 観光需要の早期回復を図るための目玉となる施策が、旅行割引制度(北海道ふっこう割)の導入だ。国内外からの旅行客を対象とした旅行商品や宿泊料金を割引。国が補助金81億円、道が負担金2億円を交付し、道観光振興機構を通じて割引分を支援する仕組みだ。

 ふっこう割対象商品の売り上げは好調だ。1泊料金が最大で70%補助されることもあり、インターネット販売は発売直後からアクセスが殺到。数分で完売する事例が相次いだ。店頭販売も高齢者を中心にニーズが高く活況を呈しているという。

 対象商品には19年1―2月宿泊分も多く含まれる。客足が戻りつつある主要観光地だけでなく、それ以外の地域でも今後、ふっこう割の効果が表れることが期待される。

 観光需要を喚起させるための施策は、それだけではない。国内外向け観光プロモーションや情報発信も不可欠だ。

 国や道、民間事業者などが主体となり、国内外の「どさんこプラザ」で応援フェアを開催。また、東・東南アジアなどインバウンド重点地域で、外国航空会社へのトップセールスを展開している。さらに観光復興キャンペーンサイトの開設や、SNSを活用した情報発信にも力を入れている。

 観光振興に弾みをつけるための好機となるのが、10月に倶知安町で開かれる主要20カ国・地域(G20)観光大臣会合だ。道内では9年ぶりとなる大規模な国際会議。高橋はるみ知事は「本道の食や観光を世界にPRするまたとない機会。実り多いものとしたい」と息巻く。

 開催に向けた準備は進む。倶知安町は町推進本部や官民連携での町民会議を設置。道は倶知安町や経済団体などとともにG20観光大臣会合実行委員会を発足させた。

 今後は推進事業計画の実施が焦点となる。空港と駅でのインフォメーション機能を充実させるほか、カウントダウンモニュメントの設置や学生サミットの開催で機運醸成を図る。会合参加者やプレス向けの視察ツアー、食・観光のイベント、情報誌発行も予定している。

 胆振東部地震とブラックアウトを経験した本道は、復興への一歩を踏み出した。19年は本道経済の真価が問われる年になる。未曽有の危機を官民が一丸となって乗り越え、商機を逸することなく、これまで以上に経済を活性化させる。そうした姿を期待したい。


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