寒地土木研究所の寒地河川チームは、川の中の氷が詰まって流れをせき止める〝アイスジャム〟について、災害の発生原因や対応策を研究している。川の氾濫や取水障害などを招く現象。2018年3月には、流れてきた大量の雪に人や車両が巻き込まれる事故が道内各地で発生。そのため同研究所では災害被害の軽減を目指し、アイスジャムの発生メカニズム解明などを急いでいる。
アイスジャムは、川の水位が急激に上昇し、川から水があふれ出るなどの危険を招く。道内は12月から2月までの冬季100日程度で発生するといわれている。
アイスジャムによって川の氾濫や取水障害などの問題が発生する。名寄川の真勲別頭首工は05年と09年、13年に取水障害が発生。上水道と工業用水に影響を来すため、発生の都度、油圧ショベルで晶氷を除去するなど対応に追われた。
18年3月9日には美瑛町の辺別川、日高町の沙流川、富良野市の布礼別川で被災事故が発生した。温帯低気圧が発生しながら本道に接近し、釧路と上川南部、十勝、日高の各地方で100㍉を超える降水量を記録。オホーツクと日高の一部は最高気温10度を超えていた。
これを受け、同研究所は18年3月から道内11河川でアイスジャムの現地調査を実施。UAV(無人航空機)で空撮したり監視カメラ画像で確認するなどし、アイスジャムが発生した箇所や日時を確認した。
千歳市の嶮淵川では、最長で約5m、短いもので2・5mの氷を確認。落差工下流側で水位上昇を把握した。発生場所の特徴として、蛇行や湾曲、本川と支川の合流点付近、縦断勾配の変化点、河道内の構造物、砂州を確認。河道内の流
速が低下する箇所で発生する傾向があると示した。
アイスジャム災害の対策として、「アイスジャムスケール」と呼ぶ指標を検討している。事前に発生危険箇所を把握する手法。辺別川を例に検証したところ、事故発生箇所とその上流で値が大きくなり、アイスジャム発生の危険性を評価できる可能性があることが分かった。
Excelシートを使い、氷の厚さの変動を予測するツールも開発中だ。北見工大、北海道開発局との共同研究で、気温と降雪量、風量を入力すると毎時の氷の厚さが予測できるという。
札幌開建で21日に開かれた現地講習会で、同研究所の横山洋主任研究員は「モデルを活用すれば、(計画段階の河道整備を視野に)河道の形や流量の条件を変えながら、氷の厚さの変化などを分析することができる」と話した。