札幌市は27日、市営地下鉄、路面電車の両事業の建設改良費に、2019年度から10カ年で2000億円を投じる見通しを明らかにした。次期交通事業経営計画案で示した。地下鉄は老朽施設の更新が本格化するため、事業規模は年平均に換算して現行の1・5倍となる1800億円に上る。訪日外国人観光客の増加や、30年の冬季五輪・パラリンピック招致、新幹線延伸を見据え、まちづくりと連動した環境整備の投資を加速する。(建設改良事業概要は4面に)
27日の市営企業調査審議会交通部会(部会長・高野伸栄北大公共政策大学院長)で市交通局が示した。
次期計画は現行の5カ年から19―28年度を対象とする10カ年に期間を延長した。経営方針の大枠に変更はなく、安全で快適なサービス提供やまちづくり貢献、経営力強化を掲げた。
1971年に開業した南北線など、施設が一斉に更新期を迎えていることを背景に、年度ごとの建設改良事業は、現行規模を大きく上回る見通しだ。
地下鉄事業では、施設更新の新規事業として駅を改装する地下鉄駅リフレッシュを盛り込み、21年度から工事に着手する方針だ。事業費には10カ年で92億円を見込む。
安全確保のため施設の耐震、保全には約614億円を充て、南北線高架部の真駒内駅やシェルター改修のほか、市内3カ所の地下鉄車両基地などの耐震化を順次進める。
まちづくりへの貢献では、観光客増加や冬季オリパラ招致を見据え訪日外国人対応として、案内標識の多言語化やトイレ洋式化などの環境整備に取り組む。新幹線札幌延伸に伴い、新幹線駅と地下鉄との利便性を考慮した接続も新規で掲げた。
路面電車事業は、電車事業所の改築に約42億円を計上。28年度までにさらに14両を増やす
低床車両導入に合わせ、電力供給安定化を図るため、仮称・山鼻西変電所の新設や、新山鼻変電所の更新を計画する。
継続の停留場のバリアフリー化や制振軌道化には35億円を見込むほか、20年度には経営の上下分離方式導入を想定する。
計画案は19年2月の市議会経済観光委員会に報告し、3月の市民意見募集を経て成案化。5月の公表を見込む。