建設新聞で読み解く あのときの札幌

シリーズ「建設新聞で読み解く あのときの札幌」

 1960、70年代の札幌では、ダイナミックな建設投資が行われ、今日の発展を支える多くの都市施設が整備されました。当時の様子を北海道建設新聞の記事とともに振り返えるこの連載は「e-kensin」限定の企画です。

第10回「1972年冬季五輪〈札幌市と組織委による競技場建設〉」

2019年01月13日 07時00分

 札幌市が事業主体となった競技場は、宮の森ジャンプ、美香保屋内スケート、月寒屋内スケート、手稲山回転、手稲山大回転、藤野リュージュの6施設。選手の育成を目的に先行整備した藤野リュージュ競技場を除くと、1968年度以降に入札され、工事が本格化したのは69年度となる。一方、札幌オリンピック冬季大会組織委員会(以下、組織委)は、恵庭岳滑降、手稲山ボブスレー、手稲山リュージュ、真駒内距離の4施設と全競技場の仮設施設を担った。

 ■国内初のコース

 最も早く着工したのが、藤野リュージュ競技場。国内初の正式コースとして整備された。札幌五輪では、手稲山の競技場が気象状況などで使えない場合の予備コースという位置付けとなった。

 素掘りによる暫定的なコース造成(1135m)は67年10月に着手。68年1月には第1回全日本リュージュ選手権が行われている。

素掘りで暫定的に完成したリュージュコース(67年12月15日付)

 松村組が7035万円で落札した本工事は同年6月から着手した。コースはコンクリート造の全長1100m(直線547.3m、曲線552.7m)。男女それぞれのスタート台、コースを横断する橋、日覆い、照明灯、散水栓などを設け、同年12月に完成。69年2月の全日本冬季競技総合大会などの会場となり、選手の育成・強化に一役買った。

コンクリート造のリュージュコース(68年12月13日付)

 リュージュ競技そのものの歴史は浅く、五輪種目に加わったのは1964年開催のインスブルック大会からだ。

 ■土工を最小限に

 宮の森ジャンプ競技場建設の経緯は第8回でも触れたが、組織委の下部組織であるスキー小委員会やスキー飛躍台臨時調査委員会で検討された。

 臨時調査委は3回の会議を経て、「大倉山に90m級と70m級のジャンプ台を併設することは、技術的に可能ではあるが地域的にせまく、オリンピック会場としては分離したほうがよりよい」「分離する場合は、70m級のジャンプ台の場所は宮の森が適当である」(組織委会報第4号)との答申をまとめた。この答申はスキー小委、競技および施設専門委員会でそれぞれ承認され、最終的には67年12月の第8回組織委会議で分離建設が決まった。

 アプローチはS造で、長さ103m×幅5mの大きさ。3万人収容のスタンドは全面芝張りとした。風致保安林内に整備されたため、土工を最小限に抑え、残土もほとんど出ないように設計した。

ブルドーザーで整地中の宮の森ジャンプ競技場(69年1月1日付)

 気象観測や用地買収の後、68年10月14日に初弾の入札が行われ、北炭建設が落札。排水を皮切りに工事が始まった。本格化したのは69年度で、4月の土工、7月の建築(運営本部など)の入札はともに同社が落札。70年10月に完成している。

 ■プールとしても使用

 市が事業主体となった2カ所の屋内スケート競技場は、美香保が先行して69年5月から整備に入り、70年12月12日に竣工披露を迎えた。同月16日付の記事は「原田市長と松宮市議会議長の二人が紅白のテープにハサミを入れ、美香保小学校の児童らがくす玉を割り競技場の落成を祝つていた」と伝える。

 施設はRC造、2階、延べ6267m²の規模。「レンガ色のタイルを外壁全面にはりつけており、冬の白雪夏の芝にそのおちついた色はよくマツチする」「内部は、白系統の色で統一されており、二千五百人収容のスタンドは北側だけに配置されている。南側は全面ガラスばりで室内はひじように明るくなつており、採光への気の配りがわかる」(同日付)。設計は久米建築事務所が担当。夏にはリンク部分をプールとして使用できる施設とした。

美香保屋内スケート競技場の竣工を伝える70年12月16日付※クリックで拡大

 施工は地崎組が主体を担い、三共電気が強電、浜田電気が弱電、大信工機が暖房換気、昭和温調が給排水衛生・プール、三菱電機がリンク冷凍を手掛けた。

 五輪ではフィギュアの規定種目が行われている。

 ■最後に完成した施設

 五輪施設で最後に完成したのが、アイスホッケー会場となった月寒屋内スケート競技場。他の施設は、五輪1年前のプレオリンピックを目標に建設されたが、アイスホッケーが真駒内と美香保の両競技場で消化できるため、他の施設より遅れて70年3月に着工、71年11月に竣工している。

 

月寒屋内スケート競技場。現在は「月寒体育館」として通年で使われている
(2018年10月撮影)

 規模は延べ9678m²で、6000人収容のスタンドはリンクをはさんで両サイドに設けた。住宅が多い周辺環境への影響を少なくするため、地下1地上1階の施設とし、圧迫感を抑えた。

 屋根は1400tの鋼材を使った立体トラス構造。1辺80mの正方形で、雪を落とさないフラット型とした。真駒内が円形、美香保が片寄せ。各屋内スケート競技場の屋根の形状を見比べると、それぞれ個性があって面白い。

 設計は北海道日建設計。施工は主体が丸彦渡辺建設・木田建業JV、強電が(北)弘電社、弱電が電光電気、給排水衛生が三建設備、暖房換気が斉藤省三商店、リンク冷凍が荏原製作所。

 市はこのほか、手稲山の回転、大回転競技場を整備した。コース造成は松村組が担当。リフトは東京索道が手掛けた。

 ■国立公園内に造成

 組織委が最初に手掛けたのが、千歳市に位置する支笏洞爺国立公園内の恵庭岳滑降競技場で、札幌市外に整備された唯一の五輪施設となった。67年からコースの調査や用地測量、立ち木補償調査に着手し、68年5月の厚生省認可を経て、同年9月19日に起工式を挙行。初弾の抜根を岩倉組土建、ロープウエーを安全索道が受注している。

 69年5月19日に行われたコース造成の入札は、5度の札入れ後、随交に移り、岩倉組土建が9273万円で成契。組織委会報第17号は「この工事に稼働した延人員は約12,500人、ブルトーザー延台数850台、火薬使用量約6tであった」と伝えている。

抜開作業が急ピッチで進む恵庭岳滑降競技場(69年1月1日付)

 男子コースが標高330~1170mの間に開設され、斜面長2800m、幅20~60m、最急勾配43度、平均勾配18度。「コース全体の構成は急斜面―緩斜面―急斜面―緩斜面と交互に組み合わされ変化に富んでいる」(同会報)。女子コースは標高330~900m間に整備され、斜面長2100m、幅20~60m、最急勾配39度、平均16度。

 ゴール付近には、運営本部(W一部ブロック造、半地下地上2階、延べ884m²)、プレスセンター(S造、2階、延べ252m²、W造、2階、延べ226m²)、警備員宿舎(W一部ブロック造、半地下地上1階、延べ503m²)などの関連施設を配置。設計は田上建築制作事務所、施工は岩倉組土建が手掛けた。

 ■ともに松村組が施工

 国道5号から手稲山山頂に向かう手稲山麓線沿いにはボブスレー競技場とリュージュ競技場が整備された。どちらも施工は松村組。

 ボブスレー競技は1924年にフランス・シャモニーで開かれた第1回大会からの伝統種目だが、国内ではなじみが少なく、手稲山競技場が国内初のコースとなった。全長は1820m。このうち1580mを使って競技の計測が行われ、残る区間はゴール後のブレーキングトラックとなった。

 選手強化のため、70年2月には使用可能となり、同月には全日本冬季競技総合大会が開かれている。

 一方、リュージュ競技場は、予備コースの藤野競技場が68年に使用可能となっていたため、70年10月完成を目標に工事が進められた。

 ■陸上自衛隊も協力

 真駒内距離競技場には5kmから50kmまでの7種類のコースを造成した。69年8月に入札が行われ、中山組が落札。組織委会報第16号によると、自衛隊演習地を対象とするスタート地点の造成は「工事の早期完成、工費の節減、工事の困難性(湧水及び土質が悪い)等の諸条件を考慮」して陸上自衛隊104施設大隊第3中隊に委託。同年6月19日から9月30日に工事が行われている。

距離コース造成の発注時期を報じた69年7月25日付

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