建設新聞で読み解く あのときの札幌

シリーズ「建設新聞で読み解く あのときの札幌」

 1960、70年代の札幌では、ダイナミックな建設投資が行われ、今日の発展を支える多くの都市施設が整備されました。当時の様子を北海道建設新聞の記事とともに振り返えるこの連載は「e-kensin」限定の企画です。

第12回「1972年冬季五輪〈プレスセンターなど関連施設〉」

2019年01月27日 07時00分

 第11回に引き続き、五輪の関連施設を紹介する。オリンピック村から1kmほどの距離にある真駒内柏丘にはプレスセンターが開設され、競技の様子を国内外に伝える拠点となった。大会運営や情報発信を支えたデータ通信センター、放送センターは都心部に整備されている。

 ■道と国の合同施設

 競技場を除く五輪関連施設の多くは、他の用途の建物を転用して使った。

 国内外合わせて3700人の報道関係者が取材合戦を繰り広げたプレスセンター(72年1月20日~2月2日開館)には、本館、劇場、プール・体育館の3棟から成る北海道青少年会館を充てた。

 建設主体は、本館(RC造、3一部4階、延べ3850m²)と体育館・プール(RC造、2階、延べ3039m²)が雇用促進事業団(国)、劇場(RC造、地下1地上2階、延べ2408m²)が道。

 計画が持ち上がった段階では道単独で建てる予定だったが、検討の過程で同事業団が中小企業従業員の研修と福祉を目的に全国で建設を進めている勤労者福祉センターを道内でも計画していることが分かり、これを誘致し、道と事業団の両者で建てることになった。そのため発注時の工事名は、本館とプール・体育館が「勤労者総合福祉センター新築」、劇場は「北海道青少年会館新築」となっている。

70年8月27日付と同9月10日付

 設計は本館とプール・体育館が黒川紀章建築都市設計事務所、劇場が北海道日建設計が担った。工事は、本館とプール・体育館を70年8月26日の入札で浅沼組、劇場を同月31日に岩田建設がそれぞれ落札。71年10月に完成している。

特徴的な本館宿泊施設部の形状。主構造には立体のプレキャストコンクリートを使用した

 ■柏丘開発の端緒

 柏丘には、外国人向けの報道関係者宿舎(プレスハウス)を230戸用意した。4棟(4階建て)78戸、8棟(4、5階)152戸の2つのブロックに分けて建設。建設主体は日本住宅公団で、北海道住宅供給公社が発注業務を担当した。主体の施工は4棟78戸が丸彦渡辺建設、8棟152戸は2つの工区に分割し、岩田建設と田中組が担っている。

 五輪で使われたこれらの施設は、46haに及ぶ丘陵地帯を対象とした柏丘地区整備の一環として計画され、道路、上下水道といった他の基盤整備も五輪を契機に始まった。

 ■運営本部は中学校

 外国人向けプレスハウスは、オリンピック村のAブロックにも整備。一方、日本人向けには、日本住宅公団の札幌南3条第2市街地住宅(1棟、RC造、10階、112戸)と札幌北13条市街地住宅(同)の2棟を充てた。

 大会運営本部は、真駒内屋内スケート競技場東側の道路を挟んだ向い側の敷地に建設。設計は70年6月29日の入札で横河建築設計に決めた。主体の入札は同年8月28日に9社が参加して行われ、岩田建設が落札。大会後は改修され、真駒内曙中となっている。

大会運営本部として利用された真駒内曙中

 ■データ処理の拠点

 五輪開催時に限った施設ではないが、大会を契機に建設されたものも多い。

 日本電電公社北海道電気通信局が、データ通信業務の拠点として71年10月に完成させた札幌新大通電話局(大通西7丁目、現在のNTTコムウェア札幌ビル)もその一つ。札幌オリンピック冬季大会組織委員会(組織委)からは競技のデータ処理などを委託されている。

北海道電気通信局が所管する五輪関係工事を伝えた69年1月28日付※クリックで拡大

 69年1月28日付を見ると、「冬季札幌五輪関係に総額五十億円(データ通信二十億円、通信線路・放送回線三十億円)を投入し、新年度から本格的作業にとりかかる」とある。

 札幌新大通電話局は、1期工事の基礎地盤が同年2月10日、12社で入札が行われ、戸田建設が5回の札入れの後、6650万円で契約。2期以降の工事も同社が受注している。

五輪のデーターセンターとして稼働した旧札幌新大通電話局

 ■世界にカラー映像配信

 日本放送協会(NHK)の札幌放送会館増築もこの時期に行われた。「第11回オリンピック冬季大会 札幌報告書」(札幌市オリンピック整理室編)によると、NHKは組織委からテレビ・ラジオ関連施設の整備と運用を委託され、国内向けの取材・報道に加え、国外向けのテレビの国際映像と音声などを代表制作した。

 「札幌オリンピック放送センター」としての役割を果たすには、既設の放送会館だけでは手狭であるため、北側隣接地(北1条西1丁目)にSRC造、地下2地上4階、延べ8400m²の規模で増築。新館部分を主として国内放送用、旧館部分を海外放送機関用として使った。施工は大林組が担当した。1969年10月に着工し、71年11月に完成している。

大林組への特命を報じた69年10月18日付

71年11月に完成したNHK札幌放送会館の増築部分

 ■大会中は五輪専用

 2018年9月末をもって閉館した、さっぽろ芸術文化の館(旧北海道厚生年金会館)も同時期に完成した建物だ。

 札幌五輪では、72年1月30日に国際オリンピック委員会(IOC)の総会開会式が行われたほか、同31日から2月9日までは各種の芸術行事を開催。競技関連では「1月28日から2月13日まで、スケート競技を除く各種競技の監督者会議等と抽選会が連日開かれ、同時通訳の設備も設けられた」(同報告書)。また、各国のオリンピック委員らが宿泊施設を利用するなど「大会中は五輪専用の施設」(同)となった。

 ■文化、芸術の発信拠点

 東京、大阪に次ぐ厚生年金会館誘致に名乗りを上げた札幌市。66年4月に招致が決まった五輪を前面に掲げながらのアピールが奏功し、国の68年度予算で採択が決定した。

 その後、建設地を巡り、建設主体の社会保険庁と市が対立した経緯もあったが、68年12月に「北1西12」に決まった。その模様を報じたのが同年12月6日付。記事は「北一西一二に意見が一致したので、社会保険庁は近く設計選考委員会を発足させ、同委員会の案をもとに今月末ごろ設計を外注する」とある。

厚生年金会館の建設地決定を伝えた68年12月6日付

 69年1月14日付では、三菱地所に設計を依頼したことを伝えた。この時点で、SRC造、地下2地上7階、延べ約2万6000m²の規模を想定している。

 主体工事の入札は、1期が69年9月、2期が70年5月に行われ、いずれも鹿島建設が受注。200人が収容できる120室の宿泊施設や結婚式場、会議室などが入るクラブ棟と、2300人収容の大ホールを持つホール棟で構成され、最終的な規模はSRC造、地下1地上8階、延べ3万659m²。71年9月に文化・芸術の発信拠点が完成している。

 同会館は、国の年金福祉施設の見直しに伴って行われた2008年11月の入札で札幌市が落札し、09年12月に「さっぽろ芸術文化の館」として再オープンした。しかし、施設の老朽化が進んだため、市は札幌創世1・1・1区北1西1地区市街地再開発事業で代替施設の整備に着手。収容数が2302人と同程度のホールを持つ札幌文化芸術劇場などに役割を譲り、閉館した。

2018年9月末をもって閉館した札幌芸術文化の館(18年5月撮影)

 ■注目される跡地利用

 さっぽろ芸術文化の館の施設は今後解体となるが、都心部では希少となる1万2000m²近い敷地の活用法が注目される。また、先に紹介したNHK札幌放送会館は、2017年から北1条西9丁目で新会館の建設が進んでおり、完成する20年以降の現敷地の動向が気になるところだ。

「建設新聞で読み解く あのときの札幌」へ皆様のご意見、ご要望をお待ちしております。

北海道建設新聞社デジタル事業部
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■e-kensinプラス「建築ストック」に1960、70年代完成の300件を登録

 有料会員サイト「e-kensinプラス」のコンテンツ「建築ストック」に、1960、70年代に北海道で建てられた約300件のデータを登録しました。

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