全国木造建設事業協会は、木造の応急仮設住宅建設に関する講習会を札幌市内のポリテクセンター北海道で23日に開いた。北海道事務局を務める北海道ビルダーズ協会の会員ら約50人が参加した。午前は、熊本地震で木造の応急仮設住宅を供給した熊本工務店ネットワークの久原英司会長(エバーフィールド社長)が講演。「地域工務店が地域復興の役割を産業として果たせる」と、木造仮設住宅による復興支援の意義を強調した。午後は9坪(約30m²)の木造仮設住宅を建てる実技訓練をした。
熊本工務店ネットワーク(KKN)は、地方工務店20社で組織。2016年に発生した熊本地震では仮設住宅563戸のほか、「みんなの家」と名付けた談話室・集会所59棟を整備した。久原会長は「年間数棟を手掛ける小さな工務店の集まりなので、最初は供給できるか不安だった」と振り返った。
応急仮設住宅には、木杭に代わってコンクリート基礎が使われた。工務店が普段造っている建物の方法。応援に来た大工に細かく説明することなく、プレカットの図面を渡すだけで、スムーズに作業を進められたという。
木造応急仮設住宅のメリットとして、どんな形状や大きさの敷地でも基本図面を変形することで対応できる柔軟性の良さを挙げた。地元で加工し、地元の職人によって造ることで、地元にお金を残す経済効果も特長だとした。
さらに「材料をメーカーから購入するのではなく、地元の販売店を通して買うことも大事」と指摘。「メーカー本社ではなく、支店や営業所の成績になれば、臨時ボーナスを地元で使ってもらえる。たとえ数%高くても、通常通りの流通で機器や資材の供給を受けることが大切だ」と話した。
地域の工務店が災害に備えてしておくべきことは「基本図面を自治体と打ち合わせておくこと」とした。一般流通材を使い、なるべく簡単な施工ができるようにし、プレカット図面まで作っておくことを勧めた。建設候補地での配置計画を提出し、「有る無しでは工期や費用に大きく影響する。給排水など公共設備の確認もすべき」と説いた。
午後の実技訓練では、応急仮設木造住宅を24人で建設した。全木協は17年10月、道と災害時での応急仮設住宅の建設で協定を締結。現在は、北方建築総合研究所を加えた3者で「北海道モデル」と呼ぶ木造仮設住宅を検討している。
建設した応急仮設木造住宅は、床が押出法ポリスチレンフォーム50㍉に高性能断熱材100㍉を合わせて施工。天井はブローイング300㍉、壁は高性能グラスウール100㍉(16㌔)を設けた。収納スペースを設けるため、3寸勾配の片流れ屋根も採用。グラスウールや防湿気密フィルムをしっかり張ることが作業のポイントとなった。
道ビルダーズ協会の武部豊樹代表理事は「木造の仮設住宅は断熱・気密性能が特長。不安なのは工期と供給能力。いつでも出動できる体制を準備しなければならない」と話していた。