道建設部は、室蘭都市圏の都市交通マスタープラン素案をまとめた。人の動きを把握するパーソントリップ調査などに基づき、都市交通需要の動向を勘案して、今後必要な交通施策を示したもの。室蘭都市圏では「生活」「観光」「産業」「防災」という4つの視点から、国道36号と37号の2車線区間や白鳥新道、鷲別北通の整備、JR室蘭本線との立体交差事業の検討などを施策メニューとして盛り込んだ。
同マスタープランは、北海道総合都市交通体系調査協議会(座長・田村亨北海商科大教授)において2016年度から3年かけて策定作業を進めていて、1月31日に札幌市内で開かれた会合で素案を承認した。
室蘭都市圏は室蘭、登別、伊達、洞爺湖、壮瞥、豊浦の6市町が対象。都市や道路交通、公共交通の課題を踏まえて将来像を「魅力ある地域・観光資源と既存ストックを活用した広域都市基盤の形成により、地域内外を移動する多様な属性の人たちが安心・安全で快適な空間を創出できる都市交通の実現」と掲げた。
マスタープランの基礎となるパーソントリップ調査から、室蘭都市圏の流動は主要な幹線道路に集中し、一部区間で慢性的な交通混雑が発生していることを裏付けた。別の分析からは有珠山や倶多楽火山の噴火、太平洋側の津波災害が発生した場合は道路の直接的な被害だけでなく、交通ネットワークの分断被害も想定されると指摘。道路環境に関して、幹線道路を主軸とした安心・安全な道路整備が重要だとした。
公共交通に関しては、バス路線が利用者ニーズに対応しきれていない状況がうかがわれ、路線再編や利用促進など公共交通網の再構築が必要であるとした。
課題に対応する施策メニューとして、道路交通に関しては白鳥新道など幹線道路整備、JR室蘭本線との立体交差、長期未着手都市計画道
路の整備と方向性検討、重要物流道路や地域高規格道路の整備、基幹防災道路と接続する市町村道整備、観光地周辺の駐車場整備の検討などを盛り込んだ。
生活交通では、乗り継ぎ拠点充実に向けた交流・待合空間整備やバリアフリー化、鉄路を生かした支援など。観光交通は、観光誘導看板などの多言語表示、2次交通の充実などを施策とした。
効果検証では、15年時点で混雑するエリアは、道路整備などマスタープランに沿った施策によって35年には混雑度が4分の1に、旅行速度は時速が約4㌔向上するとした。噴火時の避難速度も上昇するほか、津波は徒歩避難が原則となるが、自動車についても鉄道との立体交差2カ所を追加することにより、一定時間に鉄道交差部を通過できない台数が3割減少すると算出した。
マスタープランは、2月からのパブリックコメントを踏まえて最終案をまとめ、3月の協議会で確認された後、策定となる。