現場打設後に余った生コンクリートを工場へ持ち帰る「戻りコン」の有償化の動きが広がっている。道内では、函館生コンクリート協同組合と旭川地方生コンクリート協同組合が2018年4月から、他地域に先駆けて実施。今春からは札幌や千歳、北渡島などでもキャンセル料の徴収を始めようとしている。有償化による減量効果の具体数は上がっていないが、既に実施している生コン工場の関係者からは「工場に戻ってくる生コンの量は、以前よりも明らかに減った」といった声が出ていて、効果は上々のようだ。
戻りコンは、天候の急変や過剰発注、数量の計算ミス、連絡不備などの理由で、全量または一部がキャンセルとなった生コンクリート。北海道生コンクリート工業組合は「持ち帰りコンクリート」と独自の呼称を付け、省資源化の浸透を目指している。
道工組は16年から道や関連団体と議論を重ね、「生コンの所有権は、打設のタイミングで工場から発注者に移転する」という自主ルールを定めた。これを踏まえ、道環境生活部が17年7月に各総合局・振興局へ自主ルールの扱いを通達。道工組は北海道建設業協会や北海道コンクリート圧送協同組合などと確認書を交わし、道内建設業界の共通認識であることを改めて示した。
有償化に向けては、17年11月に道建協へ協力を要請。具体的な取り組みは、各地の建協と生コン協組の相互理解が不可欠のため、先行する函館や旭川では説明会を開くなどして有償化を進めた。
函館生コン協組は、戻りコンで1m³当たり4000円、前日午後2時以降の出荷予定キャンセルで同2000円といった料金体系を設定。現場でやり取りするミキサー車ドライバーとゼネコン担当者の間でトラブルは無く、ルールは浸透しているという。
旭川地方生コン協組は、ポンプ車のホッパー内に余った生コンに関する独自ルールも設けている。
市場全体の出荷量が落ちているため、有償化に直結した持ち帰りコンの削減効果はつかみ切れていないが、「工場単位では明らかに少なくなったことを実感している」(斉藤弘光理事長)。従来はミキサー車1台分そのまま余って帰って来ることもあったが、有償化以降はそういったロスが全く無くなったという。
最大消費地の札幌は、4月1日出荷分から持ち帰り有償化を始める。札幌生コンクリート協同組合は1m³当たり5000円のキャンセル料を設定。需要家のゼネコンに対し、文書を出すなどして理解を求めている。
岡本繁美理事長は「無駄を無くすことで資源を減量化するのが狙い」と説明。最近は持ち帰りコンに掛かる処理費用のほか、セメントや砂といった材料費、運賃などが上昇傾向。コスト負担が増す中、生コン単価の改定も視野に入ってきた。
現場代理人としては、打設中に生コンが足りなくなって追加オーダーすると、次にミキサー車が到着するまで多くの職方を待機させなければならず、損失が大きい。このため、余裕を持ってオーダーしたいという心情になりがちになるという。
余ったコンクリートを受け入れる生コン工場は、戻りコンを再生路盤材や2次製品として再利用したとしても、年間の処理費用は1000万円ほど掛かる。時間的損失も大きく、オーダー精度の高さが工場の経営に直結する。
道工組の成田真一理事長は「省資源化の目的に沿って、今後も各地で理解を得ながら、道内全体の持ち帰りコン減少につながれば」と話している。