【ノボシビルスクIDA】ロシアの公共施設建設分野で、行政と民間の協力による官民パートナーシップ(PPP)、正確には民間資金を活用するPFI(プライベート・ファイナンス・イニシアチブ)が発展してきた。行政とは国、州(地方)、市町全てを含む。PFIはソ連時代の1980年代後半に始まり、現在は全国で約2400件のプロジェクトが稼働している。
ノボシビルスク州内ではこんな例がある。2017年、老朽化した温水供給設備の近代化プロジェクトが2市で実施された。それぞれ別事業で、一つは投資額5億(約8億5000万円)、もう一つは2億2890万(約3億9000万円)。どちらの事業もボイラ設備工事のITシンテズ社が古いパイプラインを新型に交換し、新たなパイプ網を敷設した。設備の所有権は各市役所が持ち、管理はITシンテズが手掛ける。いずれも契約期間は25年間。稼働は2市とも同年秋からで、測定の結果、従来に比べて熱エネルギー損失が1割強軽減されている。
ロシアにおけるPFIの在り方を整理しておこう。大枠を言えば、行政と民間がそれぞれの責務について契約を交わし、中長期的に実施する事業である。契約期間は通常10―30カ年だ。PFIを適用できる分野は法律で決まっており、福祉、文化、観光、療養、道路の一部、輸送インフラなどが対象になる。
民間企業あるいは投資家は、施設建設や設備改修に関して100%、または部分的に投資をする。片や行政は、一部費用を負担することは可能だが、費用全額を出すことはできない。
民間が投資を回収するパターンは主に3つ。①投資額に応じ、利息を含む分配金を行政から定期的に受け取る②施設運営で生じるもうけの中から、自らの利益を得る③施設の収益性が事前合意した水準に届かない場合、行政から差額の補償を受ける。
このどれか1つ、あるいは複数の組み合わせとなる。契約によっては、施設が利益を出せるように行政が一定の利用ボリュームを保証するケースもある。
事業の形態は2通りだ。まず、建てた施設の所有権を行政が持ち、契約期間が終わるまで民間が運営するコンセッション方式で、日本でいうBTOだ。もう1つはPFI同意書方式といい、施設の所有権は民間が持つが、契約期間後には行政に移すタイプで、日本でBOTと呼ばれる。
現在ロシア国内のPFI事業への投資総額は1兆5000億(約2兆5000億円)に上る。主な分野は住宅・公共サービスやエネルギー、交通、福祉だ。
国内最大の案件はサンクトペテルブルク市内での高速道路の建設・運営である。道路の総距離は46・6㌔、このうち橋や高架などの構造物が26・7㌔を占める。走行レーンは4―8本。この事業は道路建設における世界最大のPFIプロジェクトでもある。
ノボシビルスク州はPFI発展地域として国内トップ10に入っている。約100件の事業が登録されており、この半分強が住宅・公共、およびエネルギー分野だ。
2018年には、ノボシ市内に25mの水泳プールを建設するコンセッション方式のPFI契約が締結された。総費用は2億(約3億4000万円)で、19年末までに完成する見込みだ。ある専門家によると、水泳プールは市場ニーズが大きいため利用料を高く設定でき、民間投資家は十分なリターンが期待できるという。
また17年末、ノボシ市内の大きな川を渡る有料の自動車専用橋を建設するコンセッション契約も結ばれた。これは総額400億(約680億円)と、州内で最も高額なプロジェクトだ。
日本を含む外国企業はPFI同意書方式には関われないものの、コンセッション方式(BTO)には参加できる。今のところ直接契約した外国企業はないが、前述の高速道路プロジェクトにはロシア企業の下請けおよび技術アドバイザーとしてイタリア、トルコの企業が参加している。