建設新聞で読み解く あのときの札幌

シリーズ「建設新聞で読み解く あのときの札幌」

 1960、70年代の札幌では、ダイナミックな建設投資が行われ、今日の発展を支える多くの都市施設が整備されました。当時の様子を北海道建設新聞の記事とともに振り返えるこの連載は「e-kensin」限定の企画です。

第13回「五輪を支えた都市施設〈地下鉄(高速軌道)①〉」

2019年03月10日 07時00分

 札幌の発展に貢献した都市施設の筆頭に挙げられるのが、地下鉄(高速軌道)だ。50年以上も前に、都心部の渋滞を解消する都市交通として計画が描かれ、1972年の冬季五輪開催という追い風を受け、建設が進められた。今回は、先行して整備された南北線の計画が固まるまでの経緯に迫ってみる。

 

 ■「三線交入」

 「高速軌道三線を交入」。こんな見出しを立てた大刀豊・札幌市交通局長の談話が、1965(昭和40)年1月1日付に掲載された。「三線」とは、1号線・南北線(茨戸―創成川―テレビ塔―真駒内―藤の沢)、2号線・東西線(ひばりカ丘〈第2副都心〉―南郷―テレビ塔―鉄工・木工団地〈軽工業地帯〉)、3号線・補助系統線(東19丁目―テレビ塔―市電西線系統)。ルートは、都心にある「テレビ塔」付近で3線が交差する設定となっている。

 札幌市は1962年から、将来の人口増などに対応した都市交通網計画の策定作業に着手。64年には、北海道開発コンサルタント(現在のドーコン)に委嘱していた「札幌市における将来の交通網計画」が出来上がっている。

 談話の内容は、この交通網計画を踏まえ、20年後の1985(昭和60)年を目標とした交通網の在り方を示したもの。「交通エリアに百五十万人の人口があり、一日に二百八十万人の交通量がある」ことなどを前提とし、それに対応する「高速軌道を市中に三本、立体的に交入させることにしている」と語る。さらに「これはベツトタウンから都心に通勤するための都市交通を重点に考えたものである。現在、高速軌道に地下鉄か高架か、いずれかを使うか検討中である」としている。

 

 ■慢性化する渋滞

 高速軌道が計画された背景には、人口の急増があった。豊平町(1961年)、手稲町(67年)との合併という要因があるものの、60~69年の10年を見ると、年平均4万5000人の増加。この間、住宅建設は郊外にどんどん広がっていった。

 当時の都市交通は、電車(路面電車)とバスが主役。利用者の増加に対応するため市は、連結電車や大型バスの導入で輸送力向上に努めたが、急激な自動車普及とも重なり、朝夕の都心は慢性的な渋滞。そんな状況の中、さらなる輸送人員の増加をにらみ、高速軌道構想が浮上してきた。

 

 

■「北大―すすきの間」を先行

 まちづくりの指針である総合計画における高速軌道の位置付けはどうだったのか。第7回で紹介した1965~70年度を対象とする「まちづくり新六カ年計画」では、「高速軌道」あるいは「地下鉄」といった事業は見当たらず、「電車、バス整備」として「軌道延長のほか電車四十車両、バス五百九十二台増車、大通ターミナルなど六地区に設置(市)」との記述があった。

 当初予算に事業費が計上されたのは66年度。66年2月7日付の予算案概要を見ると、300万円の地下鉄調査費が盛り込まれている。

事業費を初めて予算化した1966年度は地質調査費を計上(66年2月7日付)※クリックで拡大

 同月12日付では「地質を調査 北大―すすきの間」の見出しで続報。「(昭和)四十二年度に本工事に着手、四十三年度中には完成させる予定をたてている」と具体的なスケジュールを示している。調査対象は南北線の一部に当る「北八条の北大正門前から南四条西四丁目の薄野まで二㌔」。ルートの候補にも触れ、「①現在の市電コースをそのまま掘り下げる②駅前を曲がらず西五丁目線を直線で南下する③西二丁目線を直線で南下するの三案が検討されている」と伝える。総工費は28億円。

 交通渋滞の緩和は、高速軌道導入の第一の目的。まずは都心部を改善しようという市の狙いが調査対象から読み取れる。

 

 ■五輪までに2線、20㎞

 高速軌道の事業内容と総工費を報じたのは1966年6月22日付。「(昭和)六十年度までに五百六十億円の工費を投じて延長四五㌔㍍にわたる高速度交通機関建設」とし、最後に「▽東西線(ひばりが丘―勤労者団地)二〇㌔=地下部分(南郷―琴似二四軒)八・八㌔、高架部分一一・二㌔」「▽南北線(藤の沢―茨戸)二五㌔=地下部分(南九条橋―北二〇条)四・五㌔、高架部分二〇・五㌔」と、2線の概要を記している。

東西、南北2線の概要を載せた1966年6月22日付※クリックで拡大

 同年12月16日付には「第一期は(昭和)五十年度までに東西線八㌔、南北線一二㌔の合計20㌔に総工費三百三十億円を投入して建設する」との記事を掲載。東西線は東札幌―琴似本通間、南北線が北24条―真駒内間。この第一期は4期に分けて建設する方針とある。

 72年冬季五輪の札幌招致が決まったのは66年4月。大刀局長は67年1月1日付で「さしあたり冬季オリンピツク開催までには第一次計画として高速軌道約二〇㌔㍍と都心バスターミナルの建設をしたい」と見通しを語っている。

 

 

 ■南北線を緊急整備

 ルート選定を含む地下鉄の調査・研究は、学識経験者で構成する高速軌道専門委員会が担った。1967年6月29日付は「南北線地下鉄経路は西四丁目通りに決定し、来月七日原田札幌市長に答申する」と伝え、「①都心を貫く路線②十分な地下面積をもつことができる」などを決定の理由として挙げている。

南北線のルート決定を伝える1967年6月29日付※クリックで拡大

 同年8月12日付1面トップで、大刀局長の記者会見が載る。高速軌道専門委員会の答申案を「全面的に尊重し、西四丁目線に最終決定した」という内容。「高速軌道の設計は大半を外注」「地下掘削工法はオープンカツト方式を採用」と工事関連にも触れ、施工業者の選考については「全国プールで行ないたい。とくに東京、名古屋などの地下鉄に実績のある業者が有力だろう」と語っている。

 先行整備する区間や工期、工事費も明らかにし、「全体計画のうち緊急整備区間とし南北線北二十四条―真駒内間一二キロを(昭和)四十三年度に着工、四十六年度までの四カ年間で完成させたい」としている。工事費は231億1900万円。1㎞当たりの工事費は地下部が29億2900万円、高架部が13億7700万円だ。

 

五輪開催を目標に南北線を先行整備することを発表した会見(1967年8月12日付)※クリックで拡大

 ■地下部の延長

 「地下部北一六条西四丁目―中島公園南端四・二㌔、高架部北二四条西四丁目―北一六条西四丁目一・三㌔、中島公園南端―真駒内六・五㌔」。この会見で示された地下、高架それぞれの区間延長は、実際に施工・供用されたものと大きく異なる。

 五輪招致の決定を受け、市がまちづくり新六カ年計画(1965~70年度)を大幅に修正し、67年12月に発表した「札幌建設5カ年計画」(67~71年度)でも地下鉄建設が盛り込まれ、南北線については同様の区間延長が記されている。

 どうして北24条―真駒内間の地下部が延長されたのか。その経緯は次の通りだ。

 市が固めた北24条―真駒内間の建設計画は67年12月の市議会で可決。同月、運輸省に「地方鉄道敷設免許申請書」、建設省に「道路使用許可申請書」が提出されたが、建設省から北24条―平岸間を地下にするよう指導があったため、計画を変更した。  

 68年1月29日付は、同月26日に行われた市議会高速軌道調査特別委員会での大刀局長の変更に関する説明を次のように記す。「建設省の意向をとり入れて、従来の北十六条―中島公園間四・二五㌔の地下部分を北二十四条―平岸間七・三㌔までに延長したい」。

市議会特別委で高速軌道地下部延長の説明が行われた(1968年1月29日付)※クリックで拡大

 市は同年3月、北24条―平岸間の全てを地下に切り替えた内容で免許申請を再提出。6月21日の運輸審議会では最終的な意見調整が行われ、免許が適当であることを中曽根康弘運輸大臣に答申。同月24日に免許が下りている。

 次回は、南北線の設計・工事の発注動向などをたどる。

 

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