国土交通省と農林水産省が公表した2019年度の公共工事設計労務単価によると、道内の全職種(43職種)平均は、比較可能な職種のみを比べた場合、前年度比3.9%増の2万4295円と8年連続で上昇した。18年度の伸び率を下回ったものの、全国平均を上回る伸び率。特に建築系の主要5職種(とび、鉄筋、型枠、大工、左官)はいずれも、ピークだった1997年度の水準に到達。全国との差を縮める一方で、被災3県である宮城県の型枠工とは1万円の開きが出るなど、一部職種の格差は埋まっていない。
18年度公共事業労務費調査では、道内でさく岩、軌道の2工種の有効サンプルが得られなかったため設計労務単価に反映されず、45職種から43職種に減少。43職種を単純平均で比較した場合、3.9%増で全国平均を0.6ポイント上回るが、18年度の45職種平均と比較した場合3.2%増、全国平均より0.1ポイント減という形になる。
道内の主要12職種(特殊作業員、普通作業員、軽作業員、とび、鉄筋、特殊運転手、一般運転手、型枠、大工、左官、交通誘導警備員A、B)の平均単価は、18年度比で4.3%増の1万9158円。
特にこれまで低く抑えられてきた、交通誘導員Aが7.9%、Bが7.4%とそれぞれ増加したことが大きい。全国でも人手不足による高騰が続いているため、その結果が反映された引き上げとなった。
主要5職種単価の年度別推移を見ると、約20年前の97―98年度にピークを迎え、当時は鉄筋や型枠、大工、左官は2万円台に乗り、とびも97年度には1万9700円に乗せた。その後は低下傾向を続け、11年度には最低水準に。ピーク時に比べ、型枠は8900円減少するなど落ち込みが続いていた。
13年度に第2次安倍政権が発足すると、労務単価算定に際して、社会保険加入に必要な法定福利費相当額(本人負担分)を確保。社会保険の未加入者も加入できるよう、法定福利費相当額を適切に単価に反映させる対策を講じたことから、増加に転じた。
18年度では、主要5職種のうち型枠を除く4職種が97年度水準を超えた。今回の改定では型枠も97年度比で2.8%増の2万2300円となった。このほか、とび14.7%、鉄筋9.5%、大工12.7%、左官17.7%それぞれ上回っている。
東日本大震災によるかさ上げ措置を受けている被災3県の単純平均と比べても、北海道は0.3ポイント上回る水準を確保。
ただし、主要5職種だけを見た場合、宮城県では、型枠が3万2300円と、4年連続で3万円台に乗っており本道とは1万円の開きが生じている。鉄筋も2万9900円と3万円台に迫っている状況だ。
一方で、北海道と東京都を比べた場合、14年度にとび、鉄筋、型枠、左官で6000円以上の差がついていたが、19年度は型枠と左官は3000円台、とびと鉄筋は4000円台まで縮小した。
札幌や後志管内など、道央圏を中心としてホテル建設や都市再開発で建築の需要が高まっている中、建築関連職種や交通誘導員を含む警備員の有効求人倍率は過去最高水準に達し、道内建設業界の人手不足は深刻だ。
石井啓一国交相も労務単価改定に合わせて技能労働者の賃金水準確保を求めており、公共工事への新単価の早期適用で、適切な支払いがなされることが期待される。