建設新聞で読み解く あのときの札幌

シリーズ「建設新聞で読み解く あのときの札幌」

 1960、70年代の札幌では、ダイナミックな建設投資が行われ、今日の発展につながる多くの都市施設が整備されました。この連載は、北海道建設新聞の記事とともに当時の様子を振り返える「e-kensin」限定の企画です。

第14回「五輪を支えた都市施設〈地下鉄(高速軌道)②〉」

2019年03月17日 07時00分

 1972年冬季五輪の札幌招致によって、高速軌道南北線(北24条―真駒内間12km)の先行整備が決まった。五輪のメイン施設である屋内、屋外のスケート競技場や選手村が配置された真駒内と都心を結ぶ交通機関が不可欠となったためだ。初弾工事は1969年1月に入札され、2月7日に起工式が行われている。

 

 ■地下部から着手

 南北線のうち、地下部に当たる北24条―平岸間7.3kmの地方鉄道敷設免許を1968年6月24日付で取得した札幌市は、設計業務を急いだ。
 設計は4つの工区に分かれ、このうち市施工分は1工区(北24条―北7条間2.5km)、2工区(北3条―南8条間1.7km)、3工区(南8条―平岸間2.6km)の3つ。1工区を中央復建、2工区を日本交通技術、3工区をパシフィックコンサルタントにそれぞれ特命で委託している。

 札幌駅の区間については「札幌市の資金で国鉄が設計、施工監理いつさいを行なう」と68年8月23日付は伝える。

 ルートは「起点の北二十四条西四丁目からまつすぐに南下し、札幌駅西広場(駐車場)をゆるいカーブで抜け、西四丁目の現在走つている電車線路の下を走り、幌平橋まで掘削。さらに豊平川の川底を横断し、中の島を経由して平岸にいたる」(同)。

 10カ所に駅を配置し、このうち、「大通駅とすすきの駅は一番作業量が多く、地下も深いので第一順位として設計を進めてきた関係上すでに図面はほぼできた」(同)としている。

南北線の路線計画図を示し、先行整備する北24条―平岸間の概要を報じた1968年8月23日付

 東西線が交差する大通駅の乗降客(1日当たり)は18万人を見込み、地下1階に通路、地下2階に南北線専用の相対式ホーム、地下3階に東西線専用の島式ホームを設置。すすきの駅は3万6000人の乗降客を見込み、地下1階に通路、地下2階に相対式のホームを構築する設計とした。

 

 ■工事は11工区に分割

 68年8月時点で想定していた同区間の工区割りは、1工区(北24条―北19条・950m)、2工区(北19条―北13条・900m)、3工区(北13条―札幌駅北側・600m)、4工区(国鉄施工・札幌駅地下部分)、5工区(北5条―北大通・650m)、6工区(大通・250m)、7工区(南1条―南6条・600m)、8工区(南6条―中島公園・600m)、9工区(中島公園内・950m)、10工区(中島公園南側―中の島停留場・500m)、11工区(中の島停留場―平岸・1000m)の11。

 市は都心部での先行着手を計画しており、同年8月21日付では、設計の2工区に当たる北3条―南8条間について「九月中旬までに基本設計を完了して、すぐ工事の着工認可を申請する考えだ」と、同20日に開催された市議会高速軌道調査特別委での大刀豊交通局長の説明を載せている。

 

 ■着工費12億円を補正

 北3条―南8条間は、68年9月16日に提出された第1回工事施工認可申請の対象区間となり、同年11月13日付には「北三条―北大通の区間につき十二月初め認可がおりる見通しである。この線にそつて、発注準備を進めていき、一月あるいは二月工事に着工する」とある。この記事は、高速電車工事業者指名選考委員会の設置方針も伝えている。

工事施工認可の動向に合わせながら建設費の補正を決めた(1968年12月5日付)

  市は、認可が早まるとの見通しを受け、68年12月の第4回定例市議会で12億円の高速電車建設工事費(債務負担行為)を予算化。工事施工認可が下りた同月20日、初弾となる北3条―北大通360mの「一般隧道構築工事」を大林組、鹿島建設、伊藤組土建、熊谷組、佐藤工業、藤田組、飛島建設、大成建設、地崎組の9社に指名発送した。地元2社を除き、地下鉄工事の施工経験を持つ会社だ。

 同月21日付に同区間の工事概要が次のように載る。「幅九㍍にわたり、現在走つている札幌市電の真下を深さ一三㍍まで掘削。とくに都心なので交通量がはげしく、工法が、受注のカギを握ることになるが、一応中島公園の試験掘りと同じように、くい打ちを行ない、その結果次第で工法を決めていく」

 

 ■難航した初弾の成契

 「5工区」とした北3条―北大通間の「高速軌道隧道構築」の入札は、69年1月7日に行われた。記事は同月10日付、18日付、22日付の3回にわたって契約までの経過を追う。

3回にわたって初弾工事の契約までの経過を伝えた。右が1969年1月10日付、左上が同18日付、左下が同22日付

 10日付では、大林組と5億5300万円で随交に入ったものの、「予定価額と随交額とには相当の開き」があるため、交通局は「再度項目別に積算を検討している」と伝えた。18日付では、再度項目別で積算を行った結果、5億3000万円前後で話し合いが進められていること、さらに22日付では、5億1000万円で「両者の話し合いがついた」と報じている。

 大幅に予定価格と入札額が開いた理由については「本道では初めての地下鉄だけに安全性に対する積算の配慮が欠けたといわれている」(18日付)と記す。

 

 ■「大きな意義をもつ基幹施設」

 「盛大に地下鉄起工式 新世紀へ第一歩踏出す」。これは69年2月7日に北海道拓殖銀行前の大通公園で行われた5工区の起工式の様子を伝えた8日付の見出し。50人の列席者を前に原田與作市長は「地下鉄事業は、目前にせまつた百万都市札幌あるいはオリンピツク開催市札幌として、将来の飛躍的伸展にあわせて、大きな意義をもつ基幹施設であり、この起工式を市民のみなさまともども喜びたい」とあいさつ。札幌を発展へと導く新たな都市交通に期待を込めた。

初弾工事となった北3条―北大通間の起工式の様子を伝えた1969年2月8日付

 

 

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