土木資材製造・販売の東宏(本社・札幌)は、トンネル工事向けの新技術開発に強みを持ち、それまでの資材商社から技術メーカーに経営方針を変えたことで、近年業績を伸ばしている。2018年9月に軽仮設リース大手の日建リース工業(同・東京)の出資を受け、本州市場での提案営業を強化。小林雅彦社長は「今後は日建グループの一員として、日本のトンネル技術に一層貢献したい」と話している。

技術メーカーとして経営変革を図る
1972年の設立。札幌と東京に拠点を持つ。16年に北洋銀行から成長が見込まれる道内中小企業として認められ、「北洋イノベーションファンド」により2000万円を増資。資本金5000万円とし、トンネル工事を中心とした技術開発に力を入れている。
元々は資材商社だったが、公共事業縮小や販売利益減少などを背景に、オリジナル商品を扱う技術メーカーに生まれ変わろうと経営方針を変更。03年に「トンネルバルーン」を西松建設と共同開発し、資材商社からの脱却を徐々に進めた。
トンネルバルーンは、2次覆工コンクリートを特殊ナイロンタフタ製のアーチ形風船で覆う養生システム。コンクリート内部と表面の温度差を小さくでき、初期強度を高められる技術として評価された。
技術メーカーとしての強みは知的財産権。登録特許20件、公開中特許7件、出願中特許13件の計43件を保有する。うちスーパーゼネコンなどとの共同開発は26件で、17件は自社単独の技術だ。
国土交通省の新技術情報提供システム(NETIS)登録に対するノウハウでも強みを持つ。生コンのミキサー車ドラム部分をシート材で保温する「トラミッキーカバー」などNETIS登録技術は9件。19年度は伊藤組土建の「ハイブリッド養生システム」が登録予定で、関わった技術登録は10件を数える。ノウハウを備え、自社で短期間に登録できるのが長所だという。
18年9月に株式の95%を取得してもらい、日建リース工業の子会社となった。東宏は後継者問題の解決、日建リース工業はトンネル事業の強化という双方の狙いが合致した。小林社長は「今までの資本力では踏み出せなかった、大型機械を使った技術開発が可能になる」とグループ化の意義を説く。
日建リース工業の添田良介トンネル営業推進部長を副社長として在籍出向で招き、全国60拠点の支店・営業所網を生かせるよう相乗効果を模索している。東宏は東京支店を墨田区両国から日建リース工業本社の千代田区神田猿楽町へ移し、スピード感の持ったきめ細かな営業を目指す。
19年3月期決算は売上高15億円、粗利は3億3000万円と、創業以来の好業績を見込んでいる。「日建連が進める働き方改革もあって、急速施工を中心としたトンネル工事の技術や製品は、一層ニーズが高くなると思う。これからも現場の人たちに、使いやすいと言ってもらえる製品を開発したい」と小林社長は話している。

東宏の小林社長(右)と添田副社長