建設新聞で読み解く あのときの札幌

シリーズ「建設新聞で読み解く あのときの札幌」

 1960、70年代の札幌では、ダイナミックな建設投資が行われ、多くの都市施設が整備されました。当時の様子を北海道建設新聞の記事とともに振り返えるe-kensin限定の連載です。

第15回「五輪を支えた都市施設〈地下鉄(高速軌道)③〉」

2019年03月24日 07時00分

 高速軌道南北線(北24条―真駒内間)は、北24条―平岸間の地下部が先行整備され、北3条―北大通間を皮切りに、ほとんどの工区が1969年に発注となった。70年からは高架部の平岸―真駒内間も本格化。71年12月の開業に向け急ピッチで進捗(しんちょく)した。

 

 ■「始まった地下鉄工事  

 南北線の初弾工事となった北3条―北大通間では、1969年2月7日の起工式後、測量や上下水道、ガス管、通信ケーブルの埋設物調査が始まり、本格着工を告げる基礎ぐいの打ち込みは3月下旬から行われた。

 69年6月14日付には、「始まった地下鉄工事」と題する5枚の写真を使った北3条―北大通間の現場ルポが掲載された。

 「現在は、総延長三六〇㍍のうち七〇㍍程度掘り進んでおり、一部ではすでに二段目に入つている」「近くに病院があるため杭打ちには神経をとがらせたが無事四百八十二本の打ち込みを工程よりも早く終り、現時点では工事のピツチは早い」。地上の様子については「ホツパーが二基設置され、毎日二〇〇立㍍の土量を持ち上げている」。地下は「ブルドーザシヨベル二台が稼働し、掘削を進めている」と伝える。

初弾工事の現場ルポを掲載した1969年6月14日付

 

 ■試験掘りでデータ収集

 地下部の施工は、起点の北24条西4丁目から南14条(幌平橋)までが、深さ平均12~13mにわたって地面を掘り下げる開削式工法(オープンカット)、豊平川横断にケーソン(潜函)工法、横断後の平岸までに開削式工法を採用した。

 開削式工法は、他の工法よりも工期を短縮でき、工費も低く抑えられるという利点がある。工程は、土留め―路面覆工―掘削―トンネル構築―埋め戻し―路面覆工撤去―土留めくい引き抜き―路面復旧。

 大規模な土木工事の経験がなかった札幌市は着工に先立ち、25地点をボーリングし、札幌駅から北方面は粘土泥炭、札幌駅から中の島は砂礫(れき)と転石、平岸は火山灰といった具体に地質を把握。中島公園内では試験掘りを行い、振動、騒音、水位、水量、土圧、土質―の6項目についてデータを集めた。

 大成建設が1968年11月に受注した試験掘りについて、69年2月7日付は次のように伝える。「最高一五㍍までの掘削に成功した。振動もケースバイケースであつたが、一応期待どおりの結果であつた」「都心部や住宅街などで、くい打ち、大型機械による騒音、振動など工事公害を未然に防ぐうえで、貴重な資料である」

工事着手に不可欠なデータを試験掘りで集めた(1969年2月7日付)

 

 ■「地下鉄最大の大物」  

 南14条―中の島間では、「地下鉄最大の大物」あるいは「最大の難工事」といわれた豊平川を横断する工事が行われた。 

 区間延長410mのうち、178mにケーソン工法を採用。工事はまず、施工対象となる河道に「築島」といわれる盛り土をつくり、コンクリート製の地下鉄トンネル本体(ケーソン)を構築する。本体の最下部には側壁だけによる作業室を設け、この空間にある土砂の掘削・搬出を繰り返すことによって14mほどの深さまで沈下させる。施工は雨の多い時期を避け、主に冬季に行われた。

豊平川横断工事の様子(1969年12月25日付)

 ケーソン1基当たりの長さは30mで、コンクリート打設量は1260㎥。6基築造した。ケーソンとケーソンの継ぎ手部分には鋼矢板を打ち込み、上部からコンクリートを打設して接続。この後、仮壁を取り除き、トンネルを構築していった。

 施工は熊谷組が担当。1969年8月25日の入札で、7回の札入れを経て15億6800万円で成契している。

 

 ■高架部の着工

 高架部となる平岸―真駒内間(4.7km)は、1969年11月に廃線となった定山渓鉄道の線路跡に整備された。同年10月22日に地方鉄道敷設免許が下りている。

 地下掘削の4分の1程度という経済性や騒音への配慮、工期の短縮効果、走行性(乗り心地)の観点から、区間の大部分にPC(プレキャストコンクリート)連続箱桁と連続沓式PC単純桁を採用。桁自体が車両の走行路となる方式とした。下部はコンクリート製T形張り出し式橋脚。ヤードでの桁製作は下部工と並行して行い、下部完了後すぐに架設できる態勢を取った。

 先行して工事に取り掛かったのが、実際の車両を使って運転技術などを訓練する真駒内教習線(1.3km)。営業開始後は自衛隊前―真駒内間に当たる区間だ。

 

 ■雪覆方式が採用  

 高架部の雪対策については、電熱によるヒーティングなどを用いて実証試験を行ったが、走行路を乾燥状態に保つことが経済的に難しいため実用化には至らず、桁上をアルミ製の屋根で覆うスノーシュルター(雪覆)方式に決まった。

 教習線を対象とした雪覆新設の初弾工事(1.1km)の入札が1970年3月30日、8社で行われ、楢崎造船が6回目、3億2870万円で落札している。

現在の真駒内駅ホーム。ドーム状のスノーシェルターが奥に見える(2019年3月撮影)

 

 ■待望の開通式

 教習線の一部を除くほとんどの高架工区が1970年4月から10月にかけて発注。引き続き、建築工事の入札が本格化し、車両センター(S造、地下1地上2階、延べ9900m²)は丸彦渡辺建設が4億5900万円、自衛隊前駅(RC造、3階、延べ4408m²)は田中組が2億4780万円、澄川駅(RC一部S造、2階、延べ2400m²)は石山組が1億5300万円、霊園前駅(RC一部S造、2階、延べ2500m²)は東急建設が1億4500万円でそれぞれ成契している。  

1970年10月と11月に掲載された建築関連工事の入札結果

 地下部を含めた北24条―真駒内間全ての工事は71年8月までに完了し、以降、車両の試運転が始まった。そして迎えた12月15日。大通駅北行きホームで開通式が行われ、くす玉割りなどのセレモニーの後、幼稚園児や小学生を乗せ、一番電車が北24条駅に向け出発した。営業運行は翌16日からスタートしている。  

開通式の様子を伝える1971年12月17日付

 工事研究資料「札幌地下鉄建設物語」(市交通局編、1985年)によると、南北線の建設費は地下部312億円、高架部120億円の合わせて432億円に上っている。

 

 ■更新に巨費投入  

 開業から50年近くを経た南北線をはじめとする高速軌道の施設は今、更新期を迎えている。  

 市交通局がまとめた次期交通事業経営計画案(2019~28年度)を掲載した18年12月28日付は「施設更新の新規事業として駅を改装する地下鉄駅リフレッシュを盛り込み、21年度から工事に着手する方針だ。事業費には10カ年で92億円を見込む」「安全確保のため施設の耐震、保全には約614億円を充て、南北線高架部の真駒内駅やシェルター改修のほか、市内3カ所の地下鉄車両基地などの耐震化を順次進める」と伝える。

 巨費を投じる新たな施設整備が再び始まろうとしている。

 

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