ノボシビルスク州投資発展エージェンシーの社長に聞く

2019年04月05日 10時00分

資金より技術、ノウハウが重要

日露協力しノボシで生産、第三国輸出を

ズィリャノフ・アレクサンドル社長

 ロシア・ノボシビルスク州と本道にはどのようなビジネス連携の可能性があるか。同州投資発展エージェンシー(IDA)のズィリャノフ・アレクサンドル社長がノボシビルスク市内でインタビューに応じた。同社長はことし2月下旬から3月上旬にかけて初めて日本を訪れたばかり。「日ロ両国が協力してノボシで生産し、第三国に輸出するのが望ましい」と持論を語った。(北海道国際交流・協力総合センター研究員 吉村慎司)

 

 

 ―初訪日から戻ったばかりと聞いた。

 東京の日ロビジネス促進団体から提案があり、東京都内と福岡市内でノボシ州の潜在力をプレゼンテーションした。1週間弱の滞在中、多くのビジネスマンと交流できた。北海道にはスケジュールの都合で行けなかったが、次はぜひ訪れたい。

 ―何が印象に残った。

 視察では福岡市のベンチャー企業支援策が非常に参考になった。また、それ以前に、街を歩くだけでも発見ばかりだった。道路にごみがなく美しいのはもちろん、歩道の舗装タイルが滑りにくいこと、道路脇の芝生や花壇から土が流れ出にくく造られていることも印象深かった。滞在中に靴が全然汚れなかったのは驚きだ。

 ―さらに挙げると。

 食べ物が素晴らしかった。私はアジアでは香港、マレーシア、シンガポールなどに出張したことがあるが、正直に言えば地元料理はあまり口に合わなかった。だが日本の食事はどれもすごく気に入った。特にラーメンは東京でも福岡でも、帰りの成田空港でも食べた。箸の使い方が上手になったと思う。

 ―食分野でのビジネス連携も考えられる。

 その通りだ。ノボシ州はロシア国内で最も農業振興に熱心な地域の一つ。私の考えでは、日本企業との協力で加工食品を製造し、外国を含む域外に出荷するのが一つの望ましいパターンだ。

 ―第三国への輸出ということか。

 そう。ノボシ州はユーラシアの中心部で、ロシア国内最大級の物流ハブだ。中央アジアは当然として中国やインドなどにもアクセスでき、こうした大消費地への輸出は日ロ双方にメリットが大きい。

 ―ノボシには既に米国の製造業などが進出しているが、最近の例はあるか。

 今まさにイタリアの企業が、ロシア企業との合弁でノボシ州内にチーズ工場を造ろうとしている。間もなく会社設立の手続きが終わる。既にイタリアの技術者がノボシに来て、ロシア産原料を使った高品質なチーズを生産できることを確認済みだ。これは2018年夏から動きだした計画で、順調に進んでいる。

 ―IDAがイタリアで誘致活動をして来てもらった。

 そうではなく、われわれのパートナーであるイタリアの「JC1」というコンサルティング会社から紹介された。こうして外国企業が当地に来てくれたとき、さまざまな情報提供や法務サポートなどを行うのがわれわれの役目だ。

 ―サポートは有料か。

 無料だ。エージェンシーという名前なので手数料を取ると誤解されがちだが、われわれは州の組織で、当地でのビジネスを検討する企業に対しては無償で対応する。ノボシに関心を持った日本企業には、気軽に相談を持ち掛けてもらいたい。

 ―事前サポートは無料としても、ビジネス自体の資金は日本頼みになるのでは。

 それは違う。日本人に理解してほしいのは、今のロシアはお金を欲しがっているのではないということだ。投資マネーはロシアにもある。今は資金よりも技術、知識、ノウハウが重要だ。例えば先ほどの輸出の話なら、東アジアや東南アジア市場におけるマーケティングなどは日本企業の方がずっと詳しい。

 ―日ロのビジネス連携が進展するために、今何が必要か。

 大事なのは、日本との交流に関わる人をノボシビルスクに少しでも増やすこと。これは逆も同じだ。交流に関わる人の数が増えれば、その次に質も上がってくると考えている。多くのビジネスマンの関心を集めるためには分かりやすい成功例も必要だろう。その意味で、早い時期に成功例を生み出したい。

 ―これは州ではなくノボシ市の話だが、来年は札幌市との姉妹都市交流が30周年を迎える。

 州と市はさまざまな面で役割が違うが、国際交流で力を合わせることは可能。30周年で人の行き来が増えるのをよい契機として、われわれもビジネスの雰囲気が盛り上がるような仕掛けを考えたい。例えば北海道でビジネスプランのコンクールを催して、優勝者にはわれわれが旅費を負担してシベリアを視察してもらうのはどうか。道内テレビ局と連携するのもいいかもしれない。いろいろな方法で、北海道にノボシの存在をアピールしていきたい。

ズィリャノフ・アレクサンドル氏 ノボシビルスク州投資発展エージェンシー社長。1976年ノボシビルスク市生まれ、42歳。公営企業幹部などを経て2014年ノボシ州投資発展エージェンシー第一副社長。17年から現職。


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