建設新聞で読み解く あのときの札幌

シリーズ「建設新聞で読み解く あのときの札幌」

 1960、70年代の札幌では、ダイナミックな建設投資が行われ、今日の発展を支える多くの都市施設が整備されました。当時の様子を北海道建設新聞の記事とともに振り返えるこの連載は「e-kensin」限定の企画です。

第16回「五輪を支えた都市施設〈地下街①〉」

2019年04月14日 07時00分

 地下鉄南北線開業のちょうど1カ月前の1971年11月16日。「ポールタウン」と「オーロラタウン」から成る「札幌地下街」がオープンした。150余りの店舗が入居し、公共通路などを含めると総面積4万㎡を超える“札幌の新しい顔”の誕生だ。国際都市として大きく飛躍するきっかけとなった冬季五輪は3カ月後に迫っていた。

 

 ■「自由に行き来できる地下歩道」

 地下空間に店舗や公共通路、駐車場を設ける地下街は、人の流れや車両を分散させる効果がある。

 札幌地下街整備のきっかけは、地下鉄(高速軌道)同様、急激な人口増への対応だ。1960年から69年の札幌市の年平均人口増は4万5000人。60年に52万人だった人口は、70年に100万人を突破し、都心は路面電車や自動車の通行渋滞が頻発していた。

 札幌都市開発公社と札幌地下街商店会が1982年に発行した「札幌地下街十年誌」に次のような記述がある。

 「ラッシュ時の『4丁目十字街』には最高で7台もの電車が連なり、反対歩道へ行こうにも道路を横切ることができない状況が発生するようになったのである。これでは、たとえば狸小路というショッピング・ゾーンが、二つに分断されたも同然である。営業権、生活権の問題であった。商売あがったりである」

 こんな状況を受け、「東西の商店街を自由に行き来できる地下歩道がほしい」(「札幌地下街十年誌」)との声が高まり、五輪開催や地下鉄整備も後押しし、68年8月の期成会発足につながる。

 ■事業主体の「公社」設立

 68年9月12日付に、期成会が「公共地下道および付属商店街設置」の陳情書を原田與作市長に提出したとの記事が出る。対象は「南一西四から薄野交差点まで」。以降、地下街設置の要望は札幌商工会議所など関係団体にも広がり、11月20日付は、地下街設置に関して原田市長が「一両日中に」市としての態度を決めると報じる。

「一両日に態度決定」。市の判断の行方を報じた1968年11月20日付

 結果的に、地下街を建設・運営管理する事業主体の「株式会社札幌都市開発公社」を、市などの公的資金を充てて立ち上げることが決まり、69年5月31日に設立となった。

 ■当初は「南1条―南4条」だけ

 この時点の地下街の対象区間は、地下鉄南北線の上部に当たる駅前通(西3丁目、西4丁目地先)の南1条―南4条(後の「ポールタウン」)だけだった。

 69年6月11日付では、同月14日から始まる第2回定例市議会に市が地下街の設計費4000万円を補正することで、「本格的な地下街建設の着工準備に入った」とある。続いて同記事は「公社としては資金的な面もあるので、とりあえず大通から狸小路を札幌五輪開催までに完成するよう、目下関係各方面の協力をあおいでいる」と施工の行方を伝える。

 東西線上部の大通西1丁目―西3丁目地下街(後の「オーロラタウン」)や駐車場の整備は、それ以降の公社役員会で固まったもので、「札幌地下街十年誌」に掲載された関係者の座談会には「ポールタウンだけじゃ弱い。オーロラタウンをつくろうということに企画が大きくなった」と記されている。

 ■南北線側は2社に特命

 地下街の工事は、南北線側が1969年12月の都市計画決定を経て、70年3月に着工した。地下鉄大通駅コンコース部の大通―南1条中通(110m)を鹿島建設、ポールタウンに当たる南1条中通―薄野(410m)を佐藤工業が施工。地下鉄の同区間をこの2社が受注していたため、特命で委託している。設計は日本交通技術と鉄道会館の共同体が担当した。

2社への特命を報じる1969年8月20日付

 ポールタウンの規模はRC造、地下2階、延べ1万4000m²。く体の幅は23mで、地下1階に幅8mの公共歩道とその両サイドに1区画当たり38.5m²(標準)の店舗を配置した。

 75年にはパルコがキ-テナントとして入居するビルの竣工に合わせ、地下街とつなぐ通路を鹿島建設の施工で整備。73年には佐藤工業の施工で、場外馬券売場との連絡路が設けられている。

 ■「4工区」に分割

 一方、大通西1丁目―西3丁目の地下街は、70年6月から発注が本格化した。

 同月6日付記事の前文は、同月13日前後に5つの工区に分けて公社が指名発送することを伝え、「総事業費三十億円以上におよぶだけに各社とも受注をめざして色めきだつている」と記す。

 規模はRC造、地下3階、延べ3万1300m²。く体の幅は33.5mで、地下2階には370台を収容する1万m²の駐車場を設けた。地下1階の公共歩道は幅員8m、延長310m。その両サイドに1区画当たり102m²(標準)の店舗を配した。設計は三菱地所が担った。

4つの工区に分割し、それぞれ4社に指名した(1970年6月11日付)

 10日付で、「鹿島、大成、佐藤、清水、大林、地崎、伊藤、岩田の八社に指名、十七日午後四時から入札する」との記事が出る。工事の分割は、6日付時点の5工区ではなく「4工区」。「各工区とも前記八社で指名を組むことになった」とし、翌11日付では各工区4社ずつの指名メンバーを報じた。

 ■設計変更で承諾

 記事は続く。6月19日付では、17日の「見積徴集」後の結果予測として「十八日現在で第一工区が鹿島建設、第2工区が清水建設、第三工区が大成建設、第四工区が大林組にそれぞれ最有力視されている。ただ予定価格との間に大幅な開きがあつた場合、指名替えしての再入札との条項があるだけに成行きが注目される」と伝える。

 翌20日付では、各工区が上記の各社と「随交中で、きよう中にも各社と成契が濃厚になった」。そして23日付では「四工区は、いずれも予定価格との間に大幅な開きがあり、決裂寸前までエスカレートしたが、このほど一〇―一五%の設計変更を行なうことで各社とも承諾した」。起工式は24日午前10時に迫っており、「関係者をホツとさせた」と伝えている。

 同記事は、施工業者選定を巡る経緯を細かく記している。

 見積徴集はしたものの、「いざふたをあけてみると三割前後の開きがあつて、当事者もドキモをぬかしていたとか」。2回目の見積もりを徴集したが、「第一回目とたいしてかわらない金額で、あわや決裂にまでエスカレートするかにみえた」―。結局、「一定の予算内で施工する以上、設計変更もやむをえないとして公社側が譲歩し、また業者も設計変更のパーセント度合によつては納得しようということで意見が一致した」。

オーロラタウンの施工業者選定までの経緯をたどる1970年6月23日付

 7月21日には設備3件の入札が行われ、電気を(北)弘電社が2億930万円、暖房を高砂熱学が2億9600万円、消火設備を大成設備が1億2750万円でそれぞれ落札している。

 ■都市飛躍の原動力

 1972年2月の五輪開催に連動する地下鉄整備に合わせて誕生した「札幌地下街」。本格的な地下街としては全国5番目となる。L字型に結ばれたポールタウン(開業時の店舗数96)とオーロラタウン(同58)。開業までに投じた工事費は合わせて67億円に上る。

 地下を有効に活用することで、都心の過密化緩和に寄与。積雪寒冷地である札幌にとっては、まちづくりを大きく飛躍させる原動力となった。

にぎわいを見せるポールタウン(2019年4月撮影)

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