道東6市町で消防庁舎の建て替え進む 背景に車両対応など

2019年04月13日 15時00分

 2019年度、道東の6市町で消防庁舎の建て替え事業が進んでいる。多くは築40―50年を迎えた庁舎が施設の老朽化により改築するものだが、背景には津波浸水想定区域からの移転や時代とともに大型化、多様化した消防車両への対応など特殊な事情が潜んでいる。(帯広支社・太田 優駿記者)

 本年度、移転改築で着工予定の釧路市西消防署白糠支署庁舎。1970年に建設し、3度の増築を経た建物は老朽化が著しい。現庁舎は海抜2・9mと津波浸水区域内で、津波警報発令時には消防車両を駅前まで移動する必要がある。移転先は海抜8・1mと津波のリスクが少ない場所を優先的に選んだ。本年度から庁舎整備を検討する釧路町の釧路東部消防組合第二分団庁舎も海抜4mと低地のため、高台への移転を目指している。

 本年度は実施設計を進める美幌消防庁舎では車庫スペースの狭あい化が建て替えの一因となっている。車庫は建設した45年前の車両台数を基準に設計したため、車両の増加と大型化に対応できない現状がある。車庫内で車両間隔が不足すると迅速な出動に支障を来す。別棟の車庫もあるが、車両運営上の利便性が悪い状況だ。改築ではRC造、3階、延べ1584m²の庁舎棟に加え、S造、3階、延べ791m²の車庫棟も整備する。

 車庫の狭あい化は美幌庁舎だけの問題ではない。移転改築する白糠支署でも車庫の基準に合った消防車両しか使えなかったり、保管庫がないためタイヤを庁舎外に置いていた。築47年を迎える津別消防庁舎では建設当時、車両8台分の大きさで設計された車庫が広報車、消防バスの増加と消防車両の大型化で手狭な状況になっている。

 旧耐震基準の庁舎が多く、耐震補強を契機とした改修の選択肢もあるが、耐震壁や鉄骨ブレースなどを内部に設置するため、車庫や職員が使用できる面積がさらに小さくなる欠点がある。加えて建設から長い年月がたち、建物の残存耐用年数も短いため建て替えの判断をする傾向にある。

 財源となる国の緊急防災・減災事業債が2020年度に期限を迎える。同事業債は災害拠点となる公共施設の耐震化や津波浸水想定区域にある公共施設の移転が対象。地方債の充当率は100%で一般財源を支出することなく、国の負担が7割と他の事業債に比べて有利な制度だ。20年度までに設計が完了した事業が対象となる点も、現在建て替えが増加する一因となっている。

 釧路市では西消防署庁舎改築に本年度から着工し、老朽化の著しい第9分団も新庁舎に入居する。上士幌町でも消防庁舎の設計者を3月に決定し、20年度から移転改築の着工を目指している。

 十勝管内の豊頃町やオホーツク管内の訓子府町など他の自治体でも老朽化した消防庁舎への対策を検討している。また移転改築する消防庁舎は、いずれも市街地に位置することから跡地利用の動向も注目されている。

 2019年4月13日付の北海道建設新聞(9面、道東版)に設計・工事に着手する消防庁舎の建設年度や新旧庁舎の規模などの一覧表を掲載しています。

関連キーワード: 建築 改築 災害・防災 耐震化

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