札幌市の桜井英文市街地復旧推進室長に聞く

2019年05月06日 09時00分

震災被災の清田区里塚、早期復旧へ

 昨年9月の北海道胆振東部地震で大規模な沈下が発生した清田区里塚地区の復旧工事が大型連休明けから始まる。地震発生から8カ月近く、地域に寄り添い、コミュニティー再生に力を注いできた札幌市建設局市街地復旧推進室の桜井英文室長に、復興への思いを聞いた。(建設・行政部 寺岡美貴記者)

 ―被災直後の現場の印象を。
 初めて見る状況に倒れそうになった。ただ、経験から復旧のステップは自分なりに描けていた。東日本大震災で被災した宮城県山元町に派遣された経験が生きた。復旧に時間がかかれば、外に出た人が戻らないなどコミュニティー再生は難しくなる。だから、とにかく早く再建のめどを立ててもらうためにも、3カ月で対策を示すことは最初から考えにあった。
 発生1週間後の地元説明会は住民の不満が出ることを承知で受け止めようと臨んだ。今後の取り組みの流れを説明し、市はきちんと対応していくというメッセージを伝えたかった。2回目は見通しが立てられるよう、予定する支援策を全て伝えた。 

 ―液状化対応では異例の早さで対策を樹立した。
 地盤が流動した被害の大きいエリアは住民同意が早期対応の課題になるため、住民負担をゼロにすることを目標にした。工法は専門家の意見も参考に、早期に着手できる薬液注入による地盤改良を採用。道路には深層混合処理、公園には砕石置き換えなど組み合わせることで、さらに完了が早くなることを目指した。複合的な対策は国内初だと思う。
 結果的に対策の見通しは予定より1カ月早い、昨年11月に示すことができた。地域の住民が復興委員会を立ち上げて要望や意見をまとめてくれたことも、迅速な対応につながった。説明会後「戻れるんだと感じ安心した」との言葉をもらい、方向性は間違っていなかったと思った。

 ―復旧工事がいよいよ始まる。
 25日の住民向け工事説明会では住宅再建のめどが立てられるよう、ブロックごとに復旧工事のスケジュールを示す。計画と現場の違いをなくすように、常に情報を発信し、住民の意向を聞きながら、対策工事の受注者などと調整を進めたい。
 現地事務所の駐在職員が、住民に寄り添い対応を進める。住民の生活再建が最優先なので、最も適した支援策を提案するなど個人の課題を解決しながら工事の同意につなげたい。
 5月には試験施工に入る。円滑な進行にはこれまでに形成した住民との信頼関係が欠かせない。引き続き住民と密接に関わりながら、これからは、いかに早く工事を終わらせるかにこだわっていく。

 桜井 英文氏(さくらい・ひでふみ)1965年3月11日帯広市生まれ。帯広工高卒業後、83年市役所入り。在職中に北大公共政策大学院を修了。2019年2月から現職。

(北海道建設新聞2019年4月25日付18面より)


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