屋久島で縄文杉観光を楽しんだ300人余りの登山者らを立ち往生させた18日の雨は、50年に一度の豪雨だったそうだ。時間雨量が史上最多の100㍉に達した時間帯もあったというから、いかに雨の多い屋久島でも想定外の出来事だったに違いない
▼筆者も20年ほど前に同じ道を歩いた。登山道代わりのトロッコ道はよくこんな崖地に線路をと感心するくらいの箇所も多い。あの雨の中での歩行は難儀を極めたろう。土砂崩れなどで身動きが取れなくなっていた人々は、災害出動要請を受けた自衛隊や警察の懸命な救助活動により翌19日までに全員無事下山した。命を落とす人が出ず本当に良かった。迅速、的確な活動のたまものだろう
▼日本の南の屋久島を豪雨が襲ったかと思えば、北の本道では暴風である。道東自動車道の浦幌町付近で20日、風に巻き上げられた土ぼこりのため目前の車が見えないほどの視界不良が発生。バスやタンクローリー、乗用車合わせて10台以上が絡む多重交通事故を引き起こした。この北と南の気象現象、関係がないようで実は原因が同じ。日本列島を挟み太平洋に強い高気圧、日本海に低気圧が居座り勢力が拮抗(きっこう)したため、高気圧から吹き出した強い風が南には大量の水蒸気をもたらし、北では地吹雪のような土ぼこりの嵐を生んだのである
▼5月の日本は寒気と暖気が頻繁に入れ替わり、天候の急変に戸惑うことも少なくない。外出先で不測の事態に遭遇することもあろう。いざというときパニックに陥らないよう、今時期は空の表情に神経を研ぎ澄ませたい。