道は30日、札幌市内の道新ホールで北海道胆振東部地震シンポジウムを開いた。市民ら約550人が参加し、昨年の地震によって厚真町などで発生した土砂災害のメカニズムや、被災住民の生の声を聞き、大規模地震の恐ろしさをあらためて確認。「まさかは必ずやってくる」という認識を共有し、減災対策と日頃からの備えの重要性を考えた。
開会に当たり、鈴木直道知事は「時として自然は猛威を振るう。胆振東部地震の経験を共有して、今後の教訓として生かさなければならない」と述べ、一人一人の備えを呼び掛けた。
胆振東部地震の発生メカニズムに関して、北大大学院農学研究院の山田孝教授は、厚真町などでの土砂災害が急傾斜地崩壊危険区域の対象となる30度よりも緩い勾配で相当数の山腹崩壊が発生し、区域より遠くまで土砂が流出したことが特徴的だと解説。土砂災害対策を施した箇所で大きな崩壊が見られなかったことから、ハード整備の必要性を強調した。
道立総合研究機構地質研究所の大津直部長は、広範囲で発生した液状化について説明。復旧・復興を図るためには、地形地質の形成過程や人為的な影響を考慮した地盤調査と適切な評価が必要だとした。
この後、胆振東部3町から3人の住民が登壇。安平町追分地区に住む小野寺捷さんは「地震であることはすぐ分かったが、逃げようにも揺れが大きく柱にしがみつくことしかできなかった」と、地震発生時の恐怖を生々しく語った。46日間の避難所生活は行政や自衛隊の助けが心強かったとしながらも、自宅が被害を受けたため今後の生活に不安を抱えていると胸中を打ち明けた。
防災科学技術研究所の大角恒雄主幹研究員は、今後の災害発生リスクとして千島海溝沿いの巨大地震の可能性について解説したほか、1993年の釧路沖地震で生じた液状化現象を教訓に、盛り土宅地や護岸における対策が必要になってくるとした。有珠山や樽前山の火山活動についても触れ、土石流災害への対応も急務になっていることを指摘。今後もさまざまなリスクが想定されると、注意を喚起した。