大阪大と興部町は、バイオガスからメタノールを製造する技術開発と実用化検討を共同で始める。乳用牛などの家畜ふん尿から得られるバイオガスを原料に、メタノールとギ酸を製造。コア技術が確立すれば、町営プラントから年間80㌧のメタノールと400㌧のギ酸が得られると試算している。全国の乳牛や肉用牛135万頭から試算すると約1700億円分(350万㌧)のメタノールに相当し、電力供給が不安定な地域への燃料供給に貢献する技術などとして期待できるという。
町営の興部北興バイオガスプラントと大阪大が開発したメタン酸化技術を利用し、バイオガスに含まれているメタンガスからメタノールとギ酸を製造する。
大阪大先導的学際研究機構の大久保敬教授ら研究グループが開発した変換技術を応用。除菌・消臭剤の有効成分として知られる二酸化塩素の特異な反応性に着目し、空気とメタンからメタノールを常温・常圧で作り出す。二酸化炭素を排出することなく、有用な液体化学物質に変換する。
従来のメタン酸化方法は高温・高圧を必要とし、酸化剤は過酸化水素や一酸化二窒素などを使用する。そのため省エネの観点から常温・常圧の反応系が望まれ、さらに酸化剤は安全でコストのかからない空気中の酸素を用いることが理想とされていた。
メタノールを液体燃料に変換すれば、自動車燃料として従来の供給インフラで流通できる。ギ酸は乳牛の飼料となるサイレージを生産する際に添加剤として使用され、酪農家に貢献できる技術としての期待もある。
将来的には、発展途上国の非電化地域や電力供給不安定地域への燃料供給に貢献できるとみている。電力系統が弱い国内地域でのバイオガスプラント普及に貢献する技術になるとも考えている。
興部北興バイオガスプラントとオホーツク農業科学研究センター、大阪大先導的学際研究機構で共同試験が可能と考え、26日に大阪大で連携協定を締結した。
興部北興バイオガスプラントは現在、560頭分の家畜ふん尿から年間54万m³のバイオガスを製造。メタンガスを発電し事業化していたが、売電以外の事業化のため、バイオガスの新規有効利用方法を模索していた。