以前、朝食を抜くことは、健康に良いのか、医学界で論争になっているということをお話ししました。朝食は余計に食べていることだから、朝食抜きにすることで、減量ができ、健康的な体になるという論理が出てから、論争が始まりました。しかし、朝食を抜いても、意外と減量は成功せず、むしろ太ってしまう人も多く、また、朝食を食べることで脳が活性化され、午前中の仕事が効率よく行えるなどのメリットも指摘されていました。私の結論は、朝食を食べるとメリットが大きいということでした。そんな中、つい先日米国から新たな研究が発表されました。朝食を抜くと、心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患によって死亡する危険性が高くなるという、衝撃の内容です。
6550人の米国成人を17から23年間にわたる追跡調査の結果ですので、相当な信頼性のある研究です。具体的には調査対象の5.1%の人が朝食を全く取らない習慣を持ち、59%の人が毎日取ると答えています。そして、朝食を取らない人は、毎日取る人に比べて、心血管疾患で死亡するリスクが87%も高いという結果です。この種の調査でリスクが87%高いというのは、明らかな差だといえます。
なぜ、朝食を取らないと、心血管疾患による死亡のリスクが高まるのかについて、論文の中では、朝食を取らないので昼食や間食を取りすぎる傾向が強まることを指摘しています。
つまり、朝食を取らないと、前日の夕食以来、何も食べていないことになり、強い空腹のために、昼食で食べる量が多くなってしまったり、食事以外にスナックやお菓子などを口にしてしまったりするからだ、ということです。もし、朝食抜きでダイエットしようとするならば、昼食の量を抑え気味にしなければ元の木阿弥ということです。
朝食を抜くと死亡のリスクが高まるというのは、看過できませんね。喫煙でがんになるリスクは非喫煙者より50%高いといわれているのですから、朝食抜きのリスク(87%高い)は非常に高いのです。朝食は単にダイエットの問題ではなくなったと考えるべきです。朝食を取ることは、人類が長年にわたって行ってきた、文化なのですが、やはり、重要な意味が隠されていたということです。朝食を食べましょう!
(札医大医学部教授・當瀬規嗣)