ハワイとの経済交流を/米国本土事業展開へ実験地に
在札幌米国総領事館が、ハワイと本道との経済交流を促そうとビジネスセミナーを開催する。観光地として知られるハワイだが経済は活況で、ビジネスの可能性も高いという。レイチェル・ブルネット‐チェン首席領事(44)に最新情勢を聞いた。(経済産業部・吉村 慎司記者)
―ハワイは世界的観光地だ。
来訪客数が毎年伸び、2018年は地元観光局によると1000万人近くに達した。観光産業はハワイ経済の2割を占める。18年の観光客の消費額は178億㌦(約1兆9200億円)を超え、前年比で7%増と好調だ。
観光の好調が他産業に波及して、例えば観光施設の新規開発や改修が絶え間なく続いている。さらに空港、道路など公共インフラの改修・拡張計画もめじろ押しだ。雇用も増えている。
―日本の事業者の動きは。
ハワイ最大のゼネコン「ハワイアン・ドレッジング・コンストラクション・カンパニー」は鹿島USAグループだ。また、外国人による住宅売買件数の1位は日本で、オアフ島では18年の外国籍取引のうち67%が日本だった。これは2位のカナダの5倍に当たる。
―外国企業進出の点で、ハワイの良さはどんなところか。
まずは位置。太平洋の真ん中にあるため、米国本土にもアジア諸国にも飛行機1本でアクセスできる。新千歳直行便を含め、日本とホノルルを結ぶ飛行機は日に何便も飛んでいる。時差の面でも、1営業日のうちに米国本土とアジアの両方とじかに話せる利点がある。
それから人材。日本で知られていないが、ハワイは教育レベルの高さで全米でも上位に入る州だ。修士号以上の学位を取れる教育機関が11あり、専門知識を持つ高度人材が地元で働く傾向にある。近年は、むしろ本土から高度人材が仕事を求めて移住するほどだ。
―働き手の生活環境は。
「クオリティ・オブ・ライフ」(生活の質)の高さも特長。通年で暖かく、恵まれた自然の中でゴルフもテニスもマリンスポーツも楽しめる。ニュース専門放送局CNBCの3年前の調査で、ハワイは生活の質部門で首位だった。
―州人口は約140万人。市場として見れば小さく映る。
本土進出の足掛かりと考えてはどうか。ハワイの特長は多文化環境であること。日系人ほか、さまざまな文化的背景を持つ住民が多く、外から来る人や物事を受け入れやすい。米国本土で事業展開する前にビジネスの実験地としてハワイは最適だ。その先にある米国は世界最大の消費市場。人口は3億2500万人で増加している。
米国は事業展開のハードルが高いと思われがちだが、ビジネスのしやすさ、透明性では世界で最も優れた国の一つ。国籍や経歴を問わず、多くの企業に平等にチャンスを与える環境になっている。
―7月18日に札幌でセミナーを開く。
ハワイ発で今東京でも大成功しているパンケーキ店のオーナーが日本人女性で、初めて北海道で講演してもらう。またハワイに進出した本道企業の方々にも話してもらう。開拓精神を持つ北海道の企業人にぜひ聞きに来てもらいたい。
―首席領事は任期を終え7月下旬に離任する。本道の印象は。
米国に戻りたくないくらい素晴らしかった。景色も食も人も最高だった。外交官として北京や東京、台北、ロンドンに住んだが、このような土地は珍しい。クオリティー・オブ・ライフの高さはハワイと北海道の共通点だと思う。日本進出を検討する米国企業があれば、北海道も薦めるつもりだ。
(北海道建設新聞2019年6月27日付1面より 同日付2面に関連記事を掲載しています)