1988年創業のレアックス(本社・札幌)は、地質・環境調査や検層装置の独自開発に取り組んでいる。鮮明な画像を映し出せるボアホールカメラは、国内シェアの9割を占める。顧客のニーズに応えるため、日々技術革新を続けている。

地質特性を知ることがインフラ整備に大事と話す成田社長
バブル崩壊以降、公共事業の縮減で、地質調査の業務量が落ち込み、技術者が減った。日本は断層が多いため、「地質の特性を知ることが社会インフラ整備には大事」と成田昌幸社長は話す。地質構造を知ることで、建物の耐震構造をどのレベルまで上げればいいのかといった、防災・減災対策に役立てることができる。
国際協力機構(JICA)の中小企業支援事業として、2017年1月から19年2月にかけて南米のボリビアで井戸の長寿命化普及・実証事業を実施した。これまで日本の政府開発援助(ODA)で2000本の井戸を掘削したが、維持管理が適切にされず、使用できない井戸があった。
長年の使用で水あかやさびが付着すると、スクリーンの目詰まりが起き、水の出が悪くなる。水が出なくなると、井戸を新しく新設していたが、コストがかかる。
そこで、井戸カメラを使い、目詰まりの状態を確認し、適切な方法を選定してクリーニングした後、再度井戸カメラを入れてきれいな状態になったかを確認する取り組みを展開。井戸の長寿命化が図られる。
使用した井戸カメラは「i―Do 300F―Ⅱ」。先端と側方部にカメラを搭載した。先端のカメラで進路方向の画像を確認でき、気になる箇所があれば側方部のカメラに切り替え、壁面の状態を360度観察することが可能。最大で300mまで下げられる。ピント調節により、井戸内部を詳細に観察できる。
ボリビアの4県で事業を実施。回復の見込みがあるかどうか33本の井戸を調べ、うち11本を復活させた。以前と比べどのくらい水量が回復したかデータを取り、現地で事業の有効性をプレゼンテーションした。米国やブラジルのカメラに比べ、鮮明できれいに見えると現地で好評だったという。
ボアホールカメラ「BIP―6」は、2880ピクセルの高解像度を誇る。これを活用したのがVRによる地中画像解析システム「アースダイバー」。撮影した画像をVR用に変換。まるで自分がボーリング孔や井戸に入り込んだかのような体験ができる。平面では見えずらい岩盤の割れ目まではっきりと見ることが可能だ。
SDGs(持続可能な開発目標)に沿った取り組みもしている。この一環として子ども向けのイベントに出展。アースダイバーの体験などを通じ、防災意識の向上と地学・地質調査分野への理解を深めてもらおうという意図がある。

疑似井戸にカメラを入れている様子
ことし2月、自社敷地内に200mの疑似的な井戸(テストホール)を新設。製品開発に役立てたい考えだ。
18年に創立30周年を迎えた。創業当初から変わらないのは、技術革新をしながらもクオリティーを落とさず、バージョンアップを続けていること。成田社長は、AIやIoTといった最先端の技術を取り入れた技術革新で「他社との差別化を戦略の一つとしてやっていきたい」とし、「顧客の『見たい』『知りたい』のニーズに応え、社会に貢献したい」と話す。