おとなの養生訓

おとなの養生訓 第163回「Jカーブ効果」 健康リスクは飲酒量で

2019年07月12日 09時00分

 さまざまな現象の経過を言い表すとき、アルファベットの形に例えることがあります。有名なのが、Uターンですね。就職や転職に関して使われるJターンやIターンも市民権を獲得したのかもしれません。運転免許試験でS字クランクをやらされましたね。さらに、物事を分析するときにグラフを使いますが、そのグラフの曲線がアルファベットに似ているとして使われることもよくあります。はじめゆっくり、続いて急速に上昇して、最後に頂点に達すると、S字カーブといいます。業績が急速に下降し、最下点に再び上昇して元に戻るのはV字回復といいますね。

 医学にもそんな言葉はたくさんあるのですが、お酒に関しても有名な言葉があります。それがJカーブ効果です。飲酒量と健康リスク、つまり病気になりやすいかどうかを比較したときに使われる言葉です。

 1日のアルコール摂取量と健康リスクの関係を調べると、全くお酒を口にしない人に比べて、少量のお酒を毎日飲む人の方が、健康リスクが低い、つまり病気になりにくいというのです。

 もちろんたくさん飲む場合は圧倒的に健康リスクが高まり、全くお酒を飲まない人よりはるかに危険になります。この結果をグラフにするとJカーブになるので、Jカーブ効果と呼ばれるのです。

 Jカーブ効果が明らかになったときに、「酒は百薬の長ということわざは本当だった」と話題になりました。でも、もちろん飲み過ぎは良くありません。

 でも、すべての病気に共通しているわけではないこともわかりました。高血圧や脳出血、乳がんでは、飲酒しない人のリスクが一番低く、飲酒量に比例してリスクが高まります。肝硬変では、飲酒量が増えるとリスクは高まり、ある程度の量を過ぎると、さらに急激にリスクが高くなります。

 Jカーブ効果が確認できるのは、心筋梗塞や脳梗塞、糖尿病です。ただ、この3つの疾患は現在の日本で確実に増えている病気なので、特に男性では、Jカーブ効果を意識してもいいのかもしれません。

 では、リスクの低いアルコール量はどのくらいかというと、平均で1日20㌘ぐらいということです。いわゆる1単位のお酒の量です。ビールで中びん1本(500㍉㍑)、日本酒で1合、ワインで1/4本、ウイスキーでダブル1杯です。かなり難しいですね。1次会の前半で終わりになってしまいます。とすれば、宴会や晩酌の回数を減らすしか方法はないようです。

(札医大医学部教授・當瀬規嗣)


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