震災踏まえ強靱化推進
最大震度7を記録した北海道胆振東部地震、そして道内全域に及ぶ大規模停電(ブラックアウト)。あの大災害から10カ月余りが経過した。被災地は復興に向けて着実に歩みを進めるが、本格的な復旧工事は始まったばかり。強靱(きょうじん)化もまだ途上にある。
防災力の向上へ
胆振東部地震発生時の災害対応では、これまで想定しなかった問題が数多く浮上した。震災後に設置した検証委員会においても細かく課題が洗い出され、5月には知事に早急な対応を求める提言があった。
この提言を踏まえ、今議会でも防災・減災への考えが問われた。鈴木直道知事は、停電で物資調達が困難になったことや外国人への周知不足といった課題を迅速に改善する方針を説明。想定不十分との指摘を受けた積雪寒冷期への対応も、暖房器具や発電機などの備蓄増強、災害訓練などで防災力強化を図るとした。
議会冒頭の道政執行方針演説では「近年、多発する自然災害から道民の生命や財産を守ることは道の最も重要な責務」との認識を示し、社会資本の整備による災害に強い地域づくり、適切な維持管理と長寿命化で強靱化を推進すると決意した。
道は、会期中に年度内改定を目指す北海道強靱化計画の基本的な考え方とスケジュールを明らかにし、検証委員会の提言も反映する考えを示した。
自然災害が多様化、複雑化する中で、災害を完全に防ぐことは不可能に近い。しかし、せめて全国各地で起こった災害から幅広くリスクを想定し、人命最優先のリスク低減策を、地道に実行し続けていくことが大切だ。
電力安定供給を
強靱化に関して、今議会ではインフラよりもエネルギー問題に焦点が当たった。
鈴木知事は、ブラックアウトで電力安定供給の重要性をあらためて認識したことを伝えた上で、対応について「電力システム全体の強靱化はもとより、地域において自立的に確保可能なエネルギー資源を効果的に活用する」と、分散型エネルギーシステムの普及を加速する考えを述べた。さらに、新エネルギー導入加速化基金を活用した先駆的モデルづくり、地域での新たな取り組みの掘り起こしなど具体策を次々と語った。
一方、停止中の泊原子力発電所の話題には口が重い。選挙公約でベースロード電源と再生可能エネルギー、新エネルギーをバランスよく組み合わせた持続可能なエネルギー構成を目指すと掲げた鈴木知事。議会でベースロード電源の認識を問われた際には、副知事が代わりに答弁に立つ場面があり、その答弁も原子力という言葉を意識的に避けたような内容となり、議員から指摘が飛んだ。しかし、原子力規制委員会の審査が継続中で、再稼働反対の声もあるため、慎重な態度は最後まで崩さなかった。
ブラックアウトは本道の電力供給体制の脆弱(ぜいじゃく)性を明るみに出した。その対策で再生可能エネルギーの活用拡大を図ろうにも送電線不足という壁が立ちはだかっている。
「道民の暮らしや産業の発展はもとより、わが国のエネルギーミックスの実現にもつなげていく」と宣言した鈴木知事。豊富な自然エネルギー資源に恵まれ、何よりブラックアウトを経験した北海道こそ、最適なエネルギー社会を率先して提案しなければならない。