IRは道民の理解促進
年間5000万人以上が訪れる北海道。観光は本道の基幹産業として欠かせない。第2回定例道議会では、その観光産業の未来を大きく左右するカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致と道内宿泊者から徴収する法定外目的税「宿泊税」の導入に関心が集中した。
判断の時が迫る
IRを巡っては、4月に有識者懇談会での意見を基に道の基本的な考え方を策定。苫小牧を優先候補地とすることに決めた。ことし1月には民間主導の北海道IRショーケースが札幌で開催されるなど誘致の機運が高まった。これらを踏まえ高橋はるみ前知事は、誘致に向けて取り組みを進めていくことが重要と前向きな姿勢を見せていた。
今議会では、誘致の判断を迫る声が多く上がった。鈴木直道知事は「多くの道民がIRを知らない」と述べ、啓発冊子を作成して理解促進に努める考えを示した。さらに、月内にも道のホームページで道民の理解度や誘致に対する考え方を調査するアンケートを実施するなど、誘致の判断に向けて動きだした。
一方、誘致の是非については、民間投資拡大などによる経済効果が期待される一方で、ギャンブル依存症への懸念があることから「プラス・マイナス両面から総合的に勘案することが重要」と慎重な姿勢を見せた。判断の時期についても「国や他府県の動向などを見極め、適時適切に判断する」との発言にとどめ、明言は避けた。
政府は夏に予定していた基本方針の公表を先送りしているが、既に大阪や長崎、和歌山は誘致を表明し、2020年代半ばの開業を目指し誘致の準備を進めている。国や他地域の動向を静観しているだけでは出遅れるのは明らかだ。誘致に向けてかじを切るのか、決断の時が迫る。
二重課税が課題
宿泊税は、18年2月に本道観光のさらなる振興を図るため、導入を検討するよう北海道観光審議会が道に答申した。しかし、道内宿泊者の約4割が道民であるため、道民の負担となるとの批判が生じ、導入議論が停滞していた。
知事が交代したことを受け、道議会では導入の考えを問う声が相次いだ。鈴木知事は「多様化する観光需要に対応するため、法定外目的税の導入による安定的な財源確保が必要」と導入に向けた検討の再開を決断した。
現時点で、札幌や倶知安など道内10市町村が導入・検討を決めていることから、二重課税が問題となっている。解消に向け道は、全道市町村の宿泊税導入の意向調査を実施し、調整を図る。また、道と市町村の役割を踏まえた使途の具体的イメージや課税対象、税率について一定の方向性を年内に示すと表明した。
宿泊税を先行導入している都府県では、看板の多言語化やWi―Fiの設置、景観保持のための無電柱化、バスの乗降所整備などに活用している。道はこれらの先行事例を参考に使い道を検討する。
道は20年の来道外国人観光客の目標を17年度実績の1・8倍に上る500万人に設定しており、受け入れ環境の整備は急務だ。新たな財源を活用してさらなる魅力向上を果たせれば、本道観光の飛躍につながるだろう。
(この連載は建設・行政部の佐々木潤、塚本遼平、仲道梨花が担当しました)