深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り メディカルツーリズムジャパン 坂上勝也社長

2019年07月28日 15時00分

坂上勝也社長

日ロ医療交流を後押し

 6月29日の日ロ首脳会談で確認された経済協力項目の一つが、医療分野だ。メディカルツーリズムジャパン(本社・札幌)はここ数年、両国の医療機関を仲介するコーディネート業で実績を上げてきた。坂上勝也社長(38)は、日本の建設関連業者にも大きなチャンスがあると語る。

 ―ロシアとの医療交流に積極的だ。

 昨年、札幌禎心会病院とモスクワ州立学術臨床研究所(MONIKI)、そして当社の間で、日本式医療のロシア展開について合意した。今春には、MONIKIと大阪国際がんセンターが病理診断で共同プロジェクトを始めることで合意。これも当社がサポートしている。また、今年度からロシア国立放射線医学研究センター(NMRRC)と、重粒子線治療施設の設立に関わる大プロジェクトが始まっている。

 ―会社の体制は。

 国内は札幌と東京の2拠点で、外国では中国とロシアに連絡事務所、ベトナムには現地提携先がある。中国は2010年の会社設立以来インバウンド対応を続けていて、安定的に毎年300人前後を仲介している。

 ―国内医療業界は内向きといわれる。国際交流に前向きな病院とどうつながるのか。

 当社はヘルスケア関連の上場企業、シップヘルスケアホールディングスのグループ会社。私が取締役を兼ねるSMC(旧名・札幌メディカルコーポレーション)が病院向けの専門機器販売を手掛けていることもあり、本道医療業界に広いつながりを持つ。また、グループとして全国の医療業界にネットワークがあるため、国際交流を希望する医療機関のニーズをキャッチしやすい。

 ―施設設計などで日本の建設業に商機はあるか。

 ある。日本の医療施設の設計・施工に携わる業者ならチャンスは大きい。ロシアでは公立病院の老朽化が課題。古い施設を統廃合して新しい施設を建てる流れになっている。ところがお国柄か、利用者の立場に立った設計ができていなくて、あちこちに非効率が見られる。患者・医療者の動線、検査の流れなどを考慮した日本の設計を提供できれば、ニーズは相当なものだ。

 ―日本に近い極東ロシアではなく、首都モスクワ方面とパイプが太い。

 極東を否定するわけではないが、モスクワ圏は人口規模も市場も圧倒的に大きい。その上、日本の医療技術が切実に求められている。

 当社がロシア事業を本格化したのは17年と比較的最近だが、それまでは、例えば日本の医師が渡航して講演するなどの単発イベントはあっても、継続する事業がなかったと現地の医師から聞く。今、当社は継続的事業の主体として注目され、モスクワ圏の医療機関とのコネクション、また事業実績の面で日本有数の存在と自負している。

 ―商習慣の違いがあるはず。ときには「袖の下」も必要では。

 そんなイメージを私も持っていたが、実際には賄賂を要求されることは一切ない。昔は公務員などに金品を渡すのが当たり前だったと聞くが、今は厳しく、関わった公務員は職を追われることもあるようだ。ロシアの医療人は誠実な人が多く、日本の医療を輸出する立場からは、仕事をしやすい環境だと感じている。(聞き手・吉村 慎司)

 坂上勝也(さかがみ・かつや)1981年岩見沢市生まれ。北海学園大卒、2014年小樽商大大学院商学研究科修了。02年札幌メディカルコーポレーション(現SMC)入社、10年から現職。

(北海道建設新聞2019年7月5日付2面より)


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