深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り NERC 大友詔雄センター長

2019年07月28日 15時30分

大友詔雄センター長

寒冷地は「熱」の確保重要

 木質バイオマスを中心とした自然エネルギーの利活用で、地方創生を支援するNERC(本社・札幌、ネルク)。昨年9月のブラックアウトで自立分散型エネルギーへの関心が高まる中、大友詔雄センター長(74)は、今の社会で重要なのは電気ではなく「熱」の確保だと強調し、自然エネルギーを使った食料生産システムを広げたいと考えている。

 ―最近のNERCの活動を。

 NERCは北大ベンチャー企業で、地域の産業や社会の再構築を目標に活動している。事業は自然エネルギー利活用のコンサルティングと木質バイオマスの普及促進が柱。最近は研究開発にめどが立ち、自然エネルギーを使った食料生産システム「オーガニック農業」を提供できるようになった。

 ―食料生産システム開発の経緯は。

 設立当初から、自然エネルギー利活用の最終形として食料確保の発想があった。その準備に20年ほどかかった。いつでも、どこでも、誰でもできる〝3A農業〟がキーワード。環境破壊を招く大規模のアグリビジネスではなく、小規模の家族農業を指す。国連でも決議され、SDGs(持続可能な開発目標)にもつながる。地産地消を大前提に、余った農産物は都市へ供給すればよい。価格競争に巻き込まれないよう、有機栽培による付加価値づくりが重要だ。

 ―システムの特徴を。

 地元の間伐材を燃料にまきボイラで熱を作り、ハウス内の地中を温める。家畜のふん尿などをメタン発酵装置へ通したときに出る消化液は、液肥として利用する。小清水町の農園での実証試験は、連日マイナス10度を下回る外気温でもホウレンソウを収穫できた。

 ―自然エネルギーを取り巻く市場環境は。

 まだ石油の時代だと思っている。自然エネルギーは石油に対抗するエネルギーなので、試練が続いている。日本国内ではFIT(固定価格買い取り制度)の問題がある。制度開始時から指摘されていたが、ドイツの教訓を生かせず予算がもたなかった。こうしたことでは、国民は再生可能エネルギーから完全に背を向けてしまう。

 木質バイオマスに関してはベースが林業。裏を返すと木質バイオマスが潤沢になっても、林業は成り立たない。そのため木質バイオマスで地域を活性化するには、林業を30年から100年ほどかけて再生せねばならず、その間を補うために農業と林業の連携が必要だと考える。

 ―関心が高まる自立分散型エネルギーについて。

 ブラックアウトをきっかけに、世の中で一番大事なのは電力だというイメージが強まった。しかし寒冷地は熱の確保が大切だと思う。家庭用など小規模なら、発電機能を備えたガス給湯器が有効だろう。省エネと節電に努めながら「本当に、そのエネルギーは必要ですか」と問い直すべきだ。

 ―今後の目標を。

 自然エネルギーだけで成り立つ社会を実現させたい。今は石油や核燃料の使用が環境破壊を招いているとの考えがあるが、もともとエネルギーや食料はコスト競争にさらされながら大量消費する必要があるかという考え方もある。世の中の問題を正すことを一方でやっていかないと、自然エネルギーを使う土壌にはならない。(聞き手・佐藤 匡聡)

 大友詔雄(おおとも・のりお)1945年江別市生まれ。北大工学部卒、99年自然エネルギー研究センター(現・NERC)設立。工学博士として総務省の地域資源・事業化支援アドバイザーなども務める。

(北海道建設新聞2019年7月17日付2面より)


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