
木村藤乃恵会長
製品、メンテ技術 国外へ
ショベルやクレーンなどの建設機械、またトラックなどに広く使われているディーゼルエンジン。この整備業者でつくる団体が、北海道ディーゼルポンプ振興会だ。電気自動車(EV)を筆頭に電気が動力源として広がる中、業界はどこへ向かうのか。5月に新会長に就任したヂーゼル精器工業(札幌)の木村藤乃恵専務に、現状と展望を聞いた。
―どのような団体か。
ディーゼルエンジンの最重要部の一つ、「燃料噴射ポンプ」をメンテナンスする業者の集まりだ。現在全道の18社が加盟している。
―今の市場環境は。
ディーゼル車の絶対数が減り、長い間、市場規模の縮小が続いている。東京都知事時代の石原慎太郎氏がディーゼルを有害だと訴えたのがちょうど20年前。近年では有害物質をほとんど出さない「クリーンディーゼル」技術が発達し、その認知度も上がってきたが、昔の有害イメージを完全に拭い去れていない。
―最近EVが急増しているが、この影響は。
乗用車を見ればガソリン車からハイブリッド、EVへという流れは明白。だが建設機械やトラックに限れば今のところ、ディーゼル離れの動きはない。電気モーターで動くトラックや建機はコストが高くつく上、充電できる場所が少ないという問題がある。特に輸送トラックは数百㌔を走らなければならず、EVは現実的でない。
―建機やトラックの増減は。
2017年度のデータでは、日本国内で約760万台のトラックが登録されている。建機の台数は把握できないが、年間生産量を見ると18年は40万台。どちらも前年比プラスの数字だ。
だからといって安心はできない。建機の増加は災害復興需要など、いわば特殊要因に支えられている。トラックはネット通販の拡大を背景にニーズは強いが、人手不足がネックになる。そのうちに、ドローンやほかの輸送手段が発達してくるはず。少なくとも日本のディーゼルエンジン関連市場は、長期的にさらに厳しくなると見るべきだろう。
―業界が生き残る手段はあるか。
国外市場に目を向けるのが一案だ。というのも、日本の中古建機や中古トラックが世界の至る所で活躍している。年数がたつと当然メンテが必要になるが、多くの地域で、中国製などの非正規部品を使い、不十分な技術で措置をしているのが現状だ。外国に正規部品を流通させること、またメンテ技術を広めることが次のビジネスになってくるのではないか。
―国内でできることは。
技術の継承が急務だ。ディーゼルを扱ったことのない若いエンジニアも増えている。クリーン技術が加わってメンテがさらに高度化する中、人材育成を怠れば業界の未来はなくなってしまう。振興会としても、全力で対策に取り組みたい。(聞き手・吉村慎司)
木村藤乃恵(きむら・ふじのえ)1953年4月札幌生まれ。73年藤女子大卒。ピアノ講師を経て、81年に家業のヂーゼル精器工業に入社。2009年同社専務に就任。
(北海道建設新聞2019年7月25日付2面より)