持続可能な成長基盤を
2015年から進める長期5カ年計画「BULL(ブル)55」が終盤を迎えたカナモト(本社・札幌)。これまで同業他社とのM&Aや東南アジア諸国連合(ASEAN)を中心とした海外展開などを加速し、グループのサービス力を高めてきた。次期5カ年計画について、金本哲男社長は真の〝ゼネラル・レンタル・カンパニー〟に向け一層の高みを目指すと話している。
―近年の国内レンタル・リース市場について。
18年度で56兆円強を数えるなど、ここ数年の建設投資増加を背景に底堅く推移している。
20年度以降は東京五輪を境に失速が懸念されているが、各ゼネコンからのヒアリングを通し、総体的には最低50兆円レベルの建設投資が見込めるものとみている。一方で地域間格差は大きく広がるだろう。
総体的には一定の仕事がありながら、仕事のあるところとないところの色が濃くなる。今後は仕事のある地域へ、いかに効率よくリソース(人員や資産)をシフトするかが課題だ。
―これまでの「BULL55」の総括と感想を。
100点満点ではないが、一定の評価はできると思う。BULL55は14年11月にスタートしたが、それ以前の売上高は1220億円。今期(19年10月期)は4割増の1750億円を見込んでいる。営業利益率は5カ年平均で10.8%と、目標基準値を維持する予定だ。
今期末のグループ拠点数は497カ所で、5カ年で160カ所増える見通し。海外はインドネシアとベトナム、タイ、フィリピン、マレーシアに展開した。まだまだ収益には結び付いていないが、拠点強化という点では担保できたと考える。
―次期5カ年計画のキーワードは。
これまで成長基調を続けてきたが、20年からの5年間は安閑としている状況ではないと考える。「持続可能な成長基盤を構築しよう」というのが大きな柱の一つだ。
本当の意味でのゼネラル・レンタル・カンパニーを目指したい。総花的な百貨店のような話ではなく、専門店がいくつも集まって巨大モールを形成するイメージだ。
今後5年間はコストアップが予想される。優秀な人材を確保したり流出したりを防ぐため、給与体系を見直す。成長にはレンタル資産への投資も必要で、これも固定費としてかかってくる。先行投資を伴うのも次期5カ年計画の特徴となるだろう。
―海外展開について。
われわれの海外ビジネスはアジアに特化し、中国とそれ以外という分け方だ。ASEANは総体的には若干低迷気味だが、インフラ整備の潜在需要はまだまだある。
中国では17年に独資会社を設立し、昨年から鉱山の現場に大型ショベルやダンプを長期間貸し出している。リスクを問われることもあるが、建機ビジネスをやっている以上は、世界のパワーショベル需要の4割を占める地域を無視できない。
―今後の抱負を。
パブリックカンパニーとして、収益だけでなく人材確保や働き方改革など業界の範となるよう示したい。そうしたことをしっかり発信し、企業価値を高め、株価に反映させていくのも重要な使命の一つだ。
東京でのカナモトのプレゼンスは低く、北海道とは大きなギャップがある。一般的な知名度を上げることと、ソリューションを固めることの2本立てで取り組まないと、真のゼネラル・レンタル・カンパニーにはなれない。(聞き手・佐藤 匡聡)
金本哲男(かなもと・てつお)1960年5月21日生まれ、室蘭市出身。83年カナモト入社、2002年レンタル事業部長、04年取締役などを経て16年11月に社長就任。金本商店(カナモト前身)初代社長の故・金本善中氏の次男。
(北海道建設新聞2019年8月22日付2面より)