滝川市街の一角にあるアトリエで、ドールハウス制作に励む杉山武司さん。滝川市で建材店を経営していたが、2001年に廃業し東京に移住。その際、模型制作に出会い基礎を学ぶ。その後、滝川市に戻り本格的に模型制作に取り組んでいる。「男のドォルハウス」と称する作品は、元建材店の経験を生かした、リアリティーにあふれている。(空知支社・鈴木 穂乃花記者)
1962年、砂川市生まれ、滝川市在住。01年、先行きの見えない経営に見切りを付け、滝川市にあった杉山建材を廃業。今後の人生をどのように過ごすかを考えながら、沖縄や東京に移住。東京で、立体画家・芳賀一洋氏の作品と出会う。宮城県石巻市の石ノ森萬画館に展示されている「トキワ荘」や、「北の国から」に登場した「石の家」の模型を手掛けた模型作家の作品を見て、「建築の知識も生かして、模型の世界で食べていきたい」と考え、芳賀氏の模型教室に2年ほど通い、基礎を身に付けた。
ところが、東京では十分な作業スペースを確保するのが難しく、親の介護もあることから、07年に滝川市に戻った。そこで現在のアトリエを建設し、本格的な創作活動を開始した。
もともと古い車やオートバイが好きだったこともあり、作品は全てアメリカの片田舎のイメージを基に、日本や北海道のテイストを入れたレトロなガレージやカフェ。塗装や研磨により、わざと古びた雰囲気を出している。これまで、大小合わせて100点ほど制作した。建具一つ一つから丁寧に作っているため、一つ完成させるのに最長半年ほどはかかるという。
作品を作る際には「建材屋としての知識と経験があるので、普通の人よりもリアリティーを追求するのがこだわり」と話す。実際の建物の寸法をミニチュアの制作に応用するほか、建築資材を模型の材料に利用し、その建物が実在しているかのように表現している。
本格的な創作活動開始から10年以上が経過した。しかし、いまだドールハウス制作が生業と呼べるまでに至っていないという。「自分の好きなものを1年でも長く作り続けて、地道にやっていけたら」と今後の目標を話した。
31日から9月29日まで、岩見沢市絵画ホール・松島正幸記念館[MAP↗]で杉山武司展を開催する。作品30点や作品を撮影した写真を展示する。
(北海道建設新聞2019年8月26日付14面より)