西松建設は本年度から支社内に設置した現場工務革新センターの本格運用を始め、工事現場で実施していた書類作成などの事務作業を一手に担っている。全ての現場を対象に分業を進めることで現場に務める外勤者の負担軽減を図っている。将来的にはセンターを通じて、多分野の仕事をこなせる人材を育成し、スムーズな技術伝承を進めたい考えだ。
同社では、外勤者の残業時間が内勤者より多い傾向にあり平準化が課題だった。2024年4月に建設業に適用される時間外労働の上限規制にも対応するため、社長プロジェクトとしてセンターの設立を立案。ことし1月に新設し、4月から本格的に運用を開始した。
センターでは購買部や環境品質部、事務管理室、安全部、管理部などで個別に実施していた業務を包括する。
札幌支店が属する北日本支社(仙台)のセンターは4月当初に人員50人強でスタートした。従業員構成は土木系10%、建築系15%、事務系75%。5つのグループに分けられ、グループ1は北海道地域と福島県下の土木現場、グループ2が福島県下以外の東北地域の土木、グループ4は東北地域の建築、グループ5が北海道地域の建築を担当し、グループ3は他のグループの不足を補う形で支援する。グループ5のみ札幌支店にあり、その他は北日本支社に設けている。
現在支援している業務は、工事着手時の連絡会議や特殊技術を使用する際に開く施工委員会の運営や資料作成、施工計画書の作成など。環境や安全に関する計画でも現地条件に左右されずに作成できる法令関係のものは担当している。
センターの効果を確かめるため重要業績評価指標(KPI)を設定。①支援する現場の箇所数比率②1現場当たり支援できた業務数③現場の外勤者の残業時間―の3点を掲げた。北日本支社では、①について8月時点で100%となり稼働中の全ての現場で支援できている。道内は土木、建築を合わせて約20現場をサポートしている。
②に関しては、着工から竣工までに現場で実施する主業務数を208業務に整理し、このうち現場にいなくてもできるのは80業務と推定。本年度には土木は44業務、建築は46業務の支援を目指す。
6月時点で北日本支社全体で1現場当たり13・2業務の分業を達成。慣れない業務を手掛けることになった従業員も多く業務効率が一時的に低下する部分もあるが、少しずつ右肩上がりになっている状況だ。
③については、外勤者の時間外労働の平均時間が6月時点で34・6時間と、内勤であるセンターの従業員より20時間程度多い状況にある。
北日本支社の難波正和現場工務革新センター長は支援業務数について「これから工事が進めば分業の数も増えていくはずで目標には到達できるのではないか」とする一方、残業時間に関しては「分業の増加により外勤者の時間外労働を減らすことも物理的には可能だろうが、業務の得手不得手や今までの経験などいろいろな要素があるためそんなに簡単にいかないかもしれない」と見通す。
センターが軌道に乗った後の第2のステップとして、多様な能力を持つ人材が交わり各従業員ができる仕事の幅を拡大させることを目標に掲げる。各従業員はある程度オールラウンダーとしての基礎を作った上で、それぞれの専門分野のプロフェッショナルを目指してもらう流れだ。
最終的には業務の合理化や標準化を進める中で技術伝承ができるようにし、現場でのものづくりを維持し続けるシステムを構築したい考え。難波センター長は「最終目標に向けて現場業務とセンター業務のバランスや従業員構成、ICTの活用などを検証しながらいい形を模索していく」と話している。
(北海道建設新聞2019年9月5日付より)