働き方改革に挑む 札幌市内3社の取り組み

2019年09月09日 16時00分

 担い手不足が深刻化する中、女性が活躍しやすい環境づくりをはじめ、残業時間の削減、人材の定着といった働き方改革は避けて通れないテーマとなっている。建設産業も例外ではなく、札幌市内の建設会社で従業員が働きやすい環境づくりを模索する動きが出始めた。市の支援を受け、取り組みをスタートする3社に課題認識や目指す姿を取材した。(建設・行政部 寺岡美貴記者)

多様な働き方、求められるサポート

 市は札幌商工会議所と連携し、2018年度に「女性活躍推進に向けた働き方改革ロールモデルづくり」制度を創設。市内中小、零細企業を対象に、専門家によるコンサルティング料の一部を市が負担し、人材の採用や定着、残業時間削減などを図る。その過程は事例集にまとめ、市内企業に広く浸透させる。

 ことしは市内の建設業、建設関連業から北海道技術コンサルタント、アスペックコーポレーション、井上技研が参加。8月から専門家の助言を受け、半年かけて取り組みを進める。

 河川や砂防の調査、計画、設計を主力事業にする北海道技術コンサルタントでは1時間単位の時間休を取れるようにするなど、これまで独自の環境づくりに取り組んできた。

 現在、女性2人がテレワークを活用している。個人の事情に合わせた働き方ができる一方、仕事の進ちょくや成果などが分かりにくいといった課題も。谷本英徳総務部長は「管理を厳しくすれば、本人にとって働きにくい環境になってしまうかもしれない。そうなれば本末転倒」と懸念する。

 さらに子育て中の男性など希望者が増えてくれば、それだけ管理体制が必要になる。今後は専門家にアドバイスをもらい、他社の事例などを参考により良い体制を探っていく考えだ。

 職員の労働環境について谷本部長は「公共事業の受注が中心で納期が集中し、11―3月は残業や休日出勤が多くなる」と話し、これが離職原因の一つと感じている。業務の平準化など残業時間の削減が大きなテーマとなりそうだ。

 同社は環境調査部門で多くの女性技術者が活躍している。しかし専門性が高いために、急用ができた場合でも代わる人材がいないなど、サポート体制で課題があるという。

 斎藤敦子流域計画部長は今後、男性の子育てや親の介護など多様な働き方が広がっていくと指摘。フレックス制度の導入やテレワークの活用など「柔軟に働くことができる会社づくりが必要」と強調する。

 「楽しい時間を犠牲にして仕事をしていると感じる人が多いのでは」。斎藤部長はワークライフバランスの改善により従業員の生活が充実することで、楽しく働ける環境になればと期待を込める。

やりがい生む評価制度、新市場開発

 人材不足が深刻化する中、アスペックコーポレーションの矢野哲夫社長は、女性を働き手として受け入れ、活躍できる環境づくりの実現を目指す。

 内装や外装、リフォームなどを手掛ける同社。「住宅は女性が主役になる」。女性同士のコミュニケーションで感じていることをうまく吸い上げ、女性の持つ感性を取り入れることで、より顧客の満足が得られると考えている。

 一方、男性社会である工事現場に足を踏み入れる上ではハードルがある。トイレの確保や汗で化粧が崩れる、大敵の寒さ、危険を伴う作業など女性にとって厳しい環境が待ち受ける。

 子育てをしながら働く女性には、残業時間の削減や週に数日の勤務など柔軟な働き方ができる環境が必要。札幌市の支援を受けたモデルづくり事業をきっかけに体制の構築のほか、女性職人の働きがいをつくるための評価制度の創設や女性が活躍できる新たな市場の開発を目指す。

 環境づくりには当然コストがかかる。持続的な取り組みにするためには、見合った収益確保が必要になる。「品質やサービスなどしっかり提供できる体制をつくることが大事。お客さんを喜ばせるという視点がさらに重要だ」と矢野社長。「やりがいを持って仕事をできることが社員の幸せと考えている。単に労働時間を短くすれば良い訳ではない。自分の認識を変え、いろいろ改革したい」と意欲を示す。

 建物の新築や改修を主軸とする井上技研は、研修制度に力を入れている。ことしは新たに働き方改革と生産性向上に関する研修を開始。現場の統括役である中間管理職に知識を身に付けてもらうことでさらなる浸透を図る。

専門家の助言を受け、さらなる女性活躍を目指す井上技研

 同社では、現場の施工管理を担当する女性社員の採用を徐々に進めてきた。しかし、犬嶋ユカリ専務は「業界全体で見て女性技術者のロールモデルはまだ少ない」と指摘。専門家の支援を生かしながら「(モデルを)会社全体で作っていきたい」と参加した狙いを語る。

 将来的に男女比が5対5になることを目標に掲げる同社。達成に向け陣頭指揮を執る犬嶋専務は、工事現場という女性にとって厳しい環境や男女の体力差など「課題を見つけ、解決することを繰り返しながら進めていくのが着実な方法」と考えている。まずは、多忙な現場を部署や社員間で支援しやすくするため、半年間かけて仕事の見える化や情報共有の仕組みを作る計画だ。

 また「女性は仕事の方向性ややり方を男性よりも確認、相談したい傾向がある」とし、若手の女性が男性上司に相談しやすい雰囲気づくりを考えている。同社の若手女性技術者は「自分らしく働ける環境のために、気軽にコミュニケーションを取れることは大事」と歓迎する。

 女性が働きやすい職場づくりを目指した環境整備は、男性を含めた全ての働く人にとって働きやすさとは何かを考えるきっかけになる。しかし、一過性の「改革」では実現は難しい。職場環境の見直しを持続的に進め、それが当たり前となる社会が求められている。

(2019年9月3日付12面、同04日付12面より)


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