川田工業(本社・帯広、川田章博社長)にことし4月、ベトナム人のハ・シ・バさん(32)が入社した。同社で外国人を正社員として採用するのは初めて。土木舗装部に所属し、6月からは現場にも出ている。入社から半年がたったバさんに現在の仕事や日本での生活を、現場代理人を務める今多克徳次長に指導方針などを聞いた。
◆日本語と現場を学ぶ日々
バさんは母国で公務員として土木作業などに従事していたが、日本文化などに関心があり、2016年に日本、ベトナム両政府が設立したハノイの日越大学に入った。
川田工業では2年前から人材不足を背景にベトナムでの採用活動を展開しており、大学が主催する合同企業説明会にも参加している。バさんは指導教員の勧めもあって、帯広市で実施した同社のインターンシップに参加。職場の雰囲気が良く、日本の高い技術力に興味を持ったため、父母と6歳になる娘を故郷に残して来日する道を選んだ。
入社後は帯広市に住み、本社で日本の普通自動車免許取得や日本語の勉強に励んだ。「いろんな人と話せて、現場の仕事も分かるから」という本人の希望もあり、6月からは語学学習の傍ら現場に出て、芽室川西一期地区帯広かわにし導水路広野南工区(帯広開建)で測量作業や設計変更した図面の修正などを手掛けている。
日本の生活にも慣れてきたそうで、最近の趣味は購入したばかりの車でドライブすること。「まだ帯広周辺しか走っていないが、自然風景が本当にきれい」。また業務後は2時間の時差があるベトナムに電話して娘と会話を楽しんでいる。
◆新入社員と一緒に仕事を学ぶ
指導する今多次長は、現場にバさんが入ると聞いたときのことを「お互いにどれだけやれるか、期待と不安が半々だった」と振り返る。
指導は日本人の部下と同じようにすることを心掛けるが、現場内には危険も付きまとうため、説明は身ぶりを加えながらゆっくり話し、理解してから行動するよう伝えている。
現場ではバさんを含め4人が働いている。本人の明るい性格や積極的に会話をする姿勢も手伝って雰囲気も良好。中でも大きいのは、ことし入社した1年生社員の存在だ。「同時期に入ってきたので一緒のペースで仕事をしていて、相談もしやすい関係。現場が忙しいと自分の仕事優先になってしまうので助かっている」という。
今後について、バさんは「まずはもっと話せるようになること。そして日本語能力試験N2と2級土木施工管理技士の合格を目指したい」と話す。今多次長も「学ぶだけでなく、もっと日本語のコミュニケーションを取ってほしい。後は一般の新入社員と同じで着実に仕事を覚え、会社の貴重な人材に育ってくれたら」と期待を寄せる。
(北海道建設新聞2019年9月6日付9面より)