深掘り

 地域経済の成長には、新たな技術シーズを生み出すだけではなく、その技術を発展させたビジネスの創出が欠かせません。〝勝ち〟にこだわる経営者らの発想やアイデアを紹介します。

深掘り 東京カンテイ市場調査部 井出武上席主任研究員

2019年09月09日 09時00分

井出武上席主任研究員

札幌への影響は限定的

 全国のマンションをはじめ不動産の価格や取引状況などの情報を提供する東京カンテイ。2020年に東京五輪開催を控え開発が進む一方、19年に入ってから首都圏の新築分譲マンションの供給が減少していることが同社の調査で分かった。市場調査部の井出武上席主任研究員に、五輪前後の市場動向や札幌への影響などを聞いた。

 ―首都圏のマンション市場はどうか。

 新築は19年に入って突然下がり、これにつられるように中古物件では価格が下落傾向にある。特に新築の供給はファミリータイプのみで集計すると上半期(1―6月)で1万5000戸を切っている。通常だと年間4万戸弱が出ているので、この時期ではかなりのスローペースだ。このままだと3万戸までいくかというレベル。そうした戸数になってしまうと、マンション供給が大きく縮小したバブル崩壊後の1992年をさらに下回ることになる。

 ―減少傾向にある理由は。

 消費増税の影響が考えられるが、一番は東京五輪が間近に迫ってきていることが要因だと思う。不動産開発の盛り上がりが落ち着き始めており、開催後にどうなっていくかの不安が出てきている。過去の事例を見ても、大会が終わった後がピークではない。投資目的で新築マンションを買った人が売却するのは開催直前だと思うし、そうしたことから、19年に入って供給が下がったということがある。

 海外の投資家も五輪後の動きを見定めた上で、判断するパターンになっている。それだけに一時期ほど投資が活発ではない状況にあり、今は売りの方が強い傾向にある。

 中古に関しては価格が高いと感じる範囲に入っている。以前は新築マンションの価格が底値だった2000年から05年くらいに取得した人は、売却してももうかる動きがあった。今では、買い替えたとしても新築自体が高いので、売却しても利益はゼロか損をする状況になるため、様子をうかがっている人は多い。

 ―五輪後の状況をどう見るか。

 大会が終わった後は、東京都中央区晴海で選手村マンションとその近くで、タワーマンションが2棟建つなど分譲だけで4000戸の供給を控えている。さらには三井不動産が中央区勝どきで3000戸規模のビッグプロジェクトを進めるなど、都内のあちらこちらで再開発の動きがある。しかし、そうした動きはあるものの、今の価格水準では買ってくれる人は限られ、一部では供給過多なのではという話も出ているだけに、動向を注視する必要がある。

 ―首都圏の市場環境が札幌に及ぼす影響は。

 依然は東京の動きが1年後に大阪に波及し、その翌年に名古屋にくるという定説があった。今はそういう構造になっておらず、各エリア独立した動きがある。札幌に関しては、新規供給は減っているものの、中古物件に限っては福岡や仙台、広島といった地方中枢都市と比べて価格の上昇が続き好調さをみせる。札幌はマンションが集中する中央区の動きが重要なので、そこへ人の流れが止まらない限り、大きな落ち込みはないと思う。(聞き手・武山勝宣)

 井出武(いで・たけし)1964年東京生まれ。2001年東京カンテイに入社。現在は市場調査部上席主任研究員として不動産マーケットの調査・研究、講演業務を担当している。

(北海道建設新聞2019年9月6日付2面より)


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