歴史文化観光を強みに
サッポロビール工場跡地に造られたサッポロファクトリーなど歴史的要素を持つ建築物が多い創成川東地区。札幌都心部に近接し、最近ではマンションを中心に大型再開発事業が立て続けに進み、住居地域としての位置付けが高まっている。北4東6地区などの再開発に携わってきた、まちづくりコンサルタント・ノーザンクロス(本社・札幌)の山重明社長に、創成川東エリアの強みやまちづくりの在り方などを聞いた。
―創成川東地区では再開発事業により人口が増えている。
近年、創成川東地区ではマンションが建ち、子どもの数が劇的に増加している。周辺のオフィスビルには都心型保育所が増え、中央小や中央中では教室が足りなくなり、増築するほどだ。都心に近接した居住地としての性格がより一層強くなっている。
しばらくは居住人口が増えるし、住宅環境の整備はかなり進むだろう。特に北4東6地区やJR苗穂駅周辺地区のようにインフラ、街の拠点が用意されると、周辺開発は進む。JR苗穂駅周辺に関しては将来、相当の住居機能が供給され、店舗も増えてくる。
ただ、街にはライフサイクルがあり、住む世代や属性は変わる。今は子どもが増えていても30年後は分からない。そのような変化をどうやって長期的にハンドリングしていくかが課題となる。
―オフィス需要はどうか。
札幌駅前通のオフィスビルは賃料が高額のため、スタートアップ企業には敷居が高い。そうした企業が創成川東地区に集まる可能性がある。最近の開発は住宅が中心だが、大型ではないものの性能の良いオフィスビルも、これからどんどんできるのではないか。
―街づくりで今後必要なことは。
創成川東地区には、産業地区として発展してきた歴史が色濃く残っている。サッポロビール工場跡地にあるサッポロファクトリーは、国内ビール発祥の地だ。そうした産業遺産をブラッシュアップして、歴史文化観光を展開すれば、札幌のイメージや見え方も変わってくる。
特に北3条通には、道庁赤れんが庁舎や北3条広場、サッポロファクトリー、旧永山武四郎邸といった人が集う場所が連なっている。さらに苗穂方面に行けば、サッポロビール博物館や北海道鉄道技術館、雪印乳業史料館、福山醸造などの北海道遺産が集積している。近い将来、自動運転技術などを活用していけば、これらの歴史文化遺産をつなぐスマートな都市内交通手段が実現できるのではないか。
―地方都市でも再開発事業が広まっている。
地方都市の市街地再開発事業は、賃貸にしても分譲にしても市場価格に限界があり、行政が相当の補助金を出さないと成り立たない場合が多い。財政の制約を考えると、次々と事業が動いていくとは思えない。
地方都市の中心市街地を長期的に再生するビジョンと、その実現化のための手法をあらためて構築することが必要ではないか。地方都市の中心市街地は公共、生活、医療・福祉のサービス、ビジネス・観光交流機能などの複合化が基本的な方向になると思うが、それらを長期的に推進するための官民共同のエリアマネジメントが重要になると思う。(聞き手・武山勝宣)
山重明(やましげ・あきら)1959年留辺蘂町生まれ。82年北大経卒。87年にノーザンクロスを設立し、札幌を中心に道内の都市・地域のまちづくりに携わる。