災害対策は経営の根幹
2018年9月の北海道胆振東部地震発生を受けて支援物資の輸送に奔走した。来春竣工を予定する苫小牧東港の温度管理型冷凍冷蔵庫や、14年建設の本社ビルはあらゆる災害に強く避難所機能を持つ施設だ。BCM(事業継続マネジメント)で物流業界をリードする企業を目指す、苫小牧埠頭(本社・苫小牧)の橋本哲実社長に災害対策への考えや今後の方向性を聞いた。
―支援物資物流の取り組み経緯を。
17年7月に道と苫小牧地区倉庫協会が結んだ「災害時における物資の保管等に関する協定」に沿って、支援物資の保管、輸送を実施するのが目的だ。胆振東部地震では、9月7―14日の間、24時間体制で当社晴海第1倉庫1320m²を提供した。倉庫協会員90人と自衛隊員90人の延べ180人が作業に従事し、フォークリフトを延べ20台投入した。取り扱った飲料水や食料、乾電池などは45万点ほどに上った。
―課題は。
入ってくる荷物の種類や大きさ、数が分からなかった。また連絡が入り乱れ、現場が混乱するなどの事態が発生した。これらを解消するには支援活動を要する場所を把握して、作業を円滑に進めるほか、冷静な判断をするための情報の収集と一元化が重要。効率的な物流体制構築を図るため、指示を出す行政機関などに物流の専門家を置くことが必要となる。その上で〝どこに、何を、どれだけ運ぶべき〟という優先順位などを、あらかじめ決めておかないといけない。
―社内の被害と対策は。
地震発生直後から始まった大規模停電の影響が大きい。苫小牧と石狩両市にあるオイルターミナルでは非常用発電設備を稼働させた。石油類を制限しながら出荷したため、出荷量は平常時の3割程度にとどまった。
平常時の出荷を維持するために、19―20年にかけて両オイルターミナルの非常用発電設備を整備する。
また、両市に立地することはリスク分散につながるものの、通信手段の確保は欠かせない。モバイル端末の充実、バックアップを目的としたキャリアの二重化により通信強化を図り、物流機能を維持したい。
―来春、新たな冷凍冷蔵庫が竣工するが。
RC造、4階、延べ1万4178m²の新施設は、耐震構造で機械・自家発電設備を備える。事務所は2階以上に設けて避難所機能を持つ。17年の台風災害では、十勝の農作物が入ってこなかったことから、地域の物流拠点としてリスク分散を図る狙いもある。
―BCMへの考えを。
11年の東日本大震災では仙台支店が被災した。高層の倉庫だったこともあり、周辺地域の避難所としての役割を果たせた。この経験からBCMへの対応を本格的に進めた。本社ビル4階には非常用電源や備蓄品を保管。災害時は1100人を収容でき、人命を確保できる避難所・指令所として機能する。
災害対策は企業経営の根幹。リスク評価のほか、平常時から行政や自衛隊、業界内、現場などとの連携づくり、臨機応変な体制づくりに取り組むことは、民間企業が担う役割でもあると思う。(聞き手・坂本 健次郎)
橋本哲実(はしもと・てつみ)1955年8月11日、東京都生まれ。81年に北海道東北開発公庫(現日本政策投資銀行)入庫。北海道支店長や常務執行役員など歴任。2016年に苫小牧埠頭専務に就き、18年6月に社長就任。北海道倉庫業連合会会長、苫小牧地区倉庫協会会長も務める。