公民連携し まちづくり
エリアマネジメントを学ぶ公益財団法人日本生産性本部主催の地方創生カレッジが、20日から函館市で始まる。函館駅前・大門地区を対象に、人口減少時代に対応したまちづくりの在り方を考えるため、自治体や地元企業、地権者らが集まり、事業化を視野にアイデアをまとめる。「地方創生カレッジin函館」の事務局を担い、まちづくりのコンサルタントなどを展開する一般社団法人地域マネジメント・アソシエイツの戸根谷法雄代表理事に、函館市の現状や課題を聞いた。
―道内で地方創生カレッジを開催するいきさつを。
地方創生カレッジ事業を実施している日本生産性本部が、日本都市計画学会北海道支部と連携して①函館駅前・大門地区を題材としたエリアマネジメント人材の育成②全国の同規模都市のモデルとなる事例作成―を目的に企画提案してきた。まちづくりの専門家らを講師に招き、4回のセッションを実施する。
―今回、対象となった函館市の現状をどのように見るか。
函館市は、2014年に過疎地指定を受けるなど、人口減少や経済の停滞が著しく見られる。函館駅前周辺ではホテルの建設ラッシュが進む一方で、駅から大門地区に向かう中心市街地の商店街では、古い建物がなくなって駐車場が目立つようになってきた。追い打ちをかけるように老舗デパート棒二森屋が閉店したことで、集客、購買能力は減り、定住人口の減少も避けられない状況になっている。観光客が年々増えているが、函館に住んでいる人の中にはそれでいいのかという思いも多いかと推測される。
―地方創生カレッジではどのような話し合いを。
これまで地方創生カレッジは、インターネットで学習するeラーニングを中心に実施してきたが、今回はeラーニングプログラムの予習と専門家によるリアル講義、ワークショップを予定している。行政や観光、地元企業、地権者ら官民が集まり、「グランドレベル・デザイン」や「公共空間利用」、「新たな交通」など5つのテーマごとにより具体的に意見交換する。アウトプットとして、エリアマネジメントの在り方や当該地区の地方創生シナリオ、仮想モデルなどを通じて全国先進モデルを目指している。
函館は札幌、旭川と共に経済活動や住民生活などで活力ある地域社会を維持するための拠点となる「中枢中核都市」に選定されている。地方創生カレッジで生まれたアイデアが事業化につながれば、地方創生推進交付金を活用したまちづくりの推進が期待できる。
―函館駅前・大門地区のまちづくりに期待することは。
函館駅前・大門地区はインバウンドを中心に、多くの観光客が訪れる函館の交通の要所であることから、DMO的な要素を含む公民連携によるエリアマネジメントが必要だ。経済最優先でショッピングセンターなどの集客施設をつくるのではなく、雇用を創出しつつ人が住めて高齢者や若者が集まるまちづくりになればいいと思う。
函館は音楽や映画、文学などで有名アーティストを輩出しており、文化の香りが高いまちである。地域特性を生かし、多様な人が集まり、住みつづけるまち、活動するまち、楽しむまちを仮想する。
今回の地方創生カレッジで生まれたアイデアが事業化すれば、まちづくりで問題を抱えるほかの地域にも通用すると思う。(聞き手・武山勝宣)
戸根谷法雄(とねや・のりお)1952年5月生まれ。2007年に札幌学院大大学院地域社会マネジメント研究科修了。19年1月に地域マネジメント・アソシエイツの代表理事に就く。
(北海道建設新聞2019年10月18日付2面より)