釧根で輝く女性たち

 女性の社会進出が叫ばれて久しいが、過酷な自然環境下で力仕事を伴うことが多い建設関連産業は、いまだ男性中心の職場から脱しきれていないのも事実。それでも以前に比べれば現場への女性専用トイレや更衣室設置などが進み、受け入れ環境は整いつつある。

 釧根管内で活躍する女性技術者・技能者たちに、この道に入ったきっかけや会社の対応、要望などを聞いた。

釧根で輝く女性たち(1) 残間金属工業 中村光保さん、米谷陽向さん

2019年11月08日 18時00分

ハンディの先に楽しみ

 金属加工や鉄骨工事を手掛ける残間金属工業(本社・釧路町)で働いているのは、中村光保さんと米谷陽向さん。

中村光保さん(左)、米谷陽向さん

 中村さんは高校卒業後、塗装業者に就職。転職先の別の塗装業者が残間金属工業の下請けをしていた関係で同社に出入りするうち、作業の様子を見て「自分も溶接をやってみたい」と思うようになったという。2014年9月からアルバイトとして働き始め、翌4月に正社員となった。現在は板金、ステンレス製造を担う第3工場で溶接やプレス作業に従事する。

 米谷さんは18年4月採用で、女性では初の新卒。就職先を探すに当たり「接客や事務ではなく、体を動かして物を造る仕事がしたい」と考え、女性にも門戸を開いていた同社を受けた。現在では鉄骨工場で溶接に励む日々だ。

 ただ、新卒の米谷さんはもちろん、前職で現場経験があった中村さんにとっても、資材などを運ぶ際にハンディキャップを感じた。「周りの人たちが軽々と運んでいる物でも私には持てなかった」(米谷さん)、「初めのうちは筋肉痛がひどく、握力も低下して物を持てなくなった」(中村さん)と振り返る。

 だがそれを乗り越えると「さまざまな素材を使っていろいろな作業ができるので飽きないし、お客さんに感謝されたらうれしい」(中村さん)、「溶接がきれいに仕上がったときにやりがいを感じる。資格が増えるごとにやれることの幅も広がってきた」(米谷さん)と、この仕事の楽しみが見えてきた。

 残間巌社長は「女性は一般的に腕力は劣るものの、繊細で丁寧な仕事をする人が多い。定年退職してしまったがうちには女性の工場長もいて、実績があった」と2人を採用した理由を説明。中村さんのことは「前職の経験もあり、男社会の中で長く活躍しているので全く心配していない」、米谷さんのことは「初めての新卒なので不安はあったが、意欲的で任せられる部分も増えてきた」と評価している。

 一方、2人は会社に対し、女性専用のトイレ・更衣室を整備してくれたこと、各種資格の取得支援や取得後の手当が充実していることを感謝。

 ただ、作業着に関しては「もう少し汚れが目立たなくて格好いいデザインに」「引っ掛けて破れたら繕って着ているので、多めに支給してほしい」と口をそろえる。

 将来の後輩に対しては「ものづくりは奥が深く楽しい。けれどまだ女の職場とは言えないのでそのことは理解を」(中村さん)、「最初はとてもきつかった。ものづくりが好きでないと厳しい」(米谷さん)と覚悟を求めている。

 残間社長は「実は今、事務の女性社員がわが社で初めて育児休暇を取っている。今後は介護休暇が必要な社員も出てくるだろう」と述べ、さまざまな働き方に応じた体制づくりを通じ2人を支援していく考えだ。

取材メモ

 記者の質問に片方が答えると、もう片方がちゃかしたり突っ込みを入れたり、とても仲の良い2人。8学年離れているため在校時期は重なっていないが、同じ高校出身という縁が心の距離を縮めたのだろうか。

 中村光保さん(なかむら・みほ)1992年2月25日生まれ、釧路町出身、釧路東高卒

 米谷陽向さん(よねや・ひなた)99年5月26日生まれ、釧路市出身、釧路東高卒

(北海道建設新聞2019年10月23日付9面より)


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