地域産業連携拠点施設が人口減歯止めへ機能発揮
地域コミュニティーを活性化し、移住・定住者の増加を実現するため、豊浦町が2月に完成させた地域産業連携拠点施設が、その機能を発揮している。新規就農者用の農業研修やカフェなどの各施設が軌道に乗り始め、人口減少に歯止めをかける一助となりそうだ。
豊浦はイチゴ栽培が盛んで、町によると、1977年に設立した同町苺耕作組合は当初220人が所属。生産量はピークの83年に324㌧に上った。
その後、露地栽培からハウス栽培へと移行。多収量から高品質な品種に切り替えたことや、イチゴ農家が少なくなったことで、18年には生産量が36㌧まで減少した。組合の所属人数も33人まで落ち込んでいる。
町はかねて就農者を増やす取り組みを進め、第1期地方創生総合戦略に同拠点の整備を盛り込んだ。
整備場所に選んだのは大岸地区。新規就農者が多く居住し、農業の担い手を育てる場所として最適だと考えた。児童数の減少によって2007年に閉校した大岸小鉱山分校[MAP↗]を全面改修。同校には4795m²の研修用農地、研修用イチゴ栽培ハウス6棟(7・2×50m)がある。
拠点施設はW造、平屋、延べ598m²。地元就農者が利用するイチゴ選別スペースや冷蔵庫を備えた倉庫、会議室、宿泊用の客室2室などで構成する。
町は新規就農研修生を地域おこし協力隊として迎え、3年間、同施設でイチゴとその他作物を栽培する実践的研修メニューを用意。このほか、移住希望者や観光客に施設へ宿泊してもらい、農業に触れてもらうといった将来像を描く。
札幌から移住した星雄介さん、明子さん夫妻が地域おこし協力隊として1年目の研修中。また、東京などで開催されたイベントで町がPRした結果、20年度にも研修を受けたいという候補生にも出会え、動きだしは順調だ。
地域住民の声を受け、7月には施設内にカフェiyutari(イユタリ)がオープン。洞爺湖町で雑貨店経営の経験を持つ塚原弘美さんと、町の元地域おこし協力隊で仙台市出身の菅野小織さんが共同経営している。
ホットサンドやチーズケーキなどの軽食が楽しめるほか、仙台で焙煎(ばいせん)された2種類のオーガニックコーヒーを用意。店内は大岸小で使用された机や棚を生かしたつくりで、衣類、食器などの雑貨が空間を彩っている。休日には順番待ちができるほどの来客がある。
町は、将来的に施設前の広場を整備して観光客らも楽しめる空間にしたい考え。地元はもちろん、町外からの旅行者を呼び込めるような施設に成長しようとしている。(室蘭)
(北海道建設新聞2019年10月25日付11面より)