現場が楽しくて仕方ない
「私はアウトドア派なので、自然の中で仕事がしたかった。現場が楽しくて仕方ない。これでお金をもらっていいの?と感じている」
こう話すのは上田組(本社・標津、上田修平社長)第2土木部土木2課所属の境美咲さん。アウトドアが好きな活発な女性だ。網走市生まれ、斜里町育ちで、結婚を機に中標津町へ移住。ドコモショップで働いていたが、農業を営む夫の友人が同社の工藤正好統括工事部長と知り合いで、人材を募集していると聞きすぐに応募した。

境美咲さん
「土木には怖いイメージがあり、社内に怒鳴り声が響いているのではと思い込んでいた。でも面接で訪れてみたら穏やかで雰囲気も良く、これなら大丈夫と安心した」
昨年6月から働きだし、初めは工事写真の撮影と整理、書類の勉強などが中心だったが、ことしからは各現場の重機やオペレーターの手配を任されるようになった。
特に草地整備は、短期間に複数の現場が同時進行する。各現場の状況を把握し、いかに効率良く重機とオペレーターを回すかが問われる。「機械の到着が遅れると、その現場はやることがなくなってしまう」ので責任は重いが、力を合わせて完成させたときには「学園祭のような達成感が味わえる」のも魅力だ。
仕事柄、今春から重機オペレーターとして働くベトナム人技能実習生との関わりも多い。彼らと話すときは難しい言葉を避け、子どもにも分かるようかみ砕いて伝える。「高齢者を相手にすることが多かった前職が役に立った」と笑う。
同社はがんになっても安心して治療を受けつつ勤務できる体制を確立するなど、働き方改革を推進中。女性技術者受け入れもその一環だった。主婦の境さんに対しては、他の社員とのバランスを考慮しながら可能な範囲で勤務時間を融通しているという。
遠藤直人営業部長は「彼女は土木の知識ゼロからスタートしたのに、2級土木施工管理技術検定の学科試験に受かった努力家」と努力を認め、その明るさも評価する。
境さんは「しっかりした会社なのに上司の方たちとの距離感が近い。何か相談したらすぐに対応してくれる」と感謝。「土木の楽しさは女性には伝わりにくい。でも私を通じて入りたいと思う人が少しでも増えたら」と願っている。
取材メモ
冬は夫婦でアイゼンを着けて山に登ったり、イグルーを造って中でご飯を食べたりと、プライベートでは本格的にアウトドアを楽しむ境さん。来春には、27日に受けた実地試験の結果が判明する。
境美咲さん(さかい・みさき)1991年1月19日、網走市生まれ、斜里町育ち、網走桂陽高事務情報科卒。
(この連載は釧路支社の武弓弘和、石黒駿太、三浦郁実が担当しました)(おわり)
(北海道建設新聞2019年10月29日付7面より)