バイオマス産業都市構想が農林水産省に選定
八雲町のバイオマス産業都市構想が農林水産省に選定された。国の多様な補助などを活用できる。家畜ふん尿からガスや肥料、家畜用の敷料を生産するバイオガスプラント(BGP)を4基整備し、循環型農業の確立を目指す計画。町などが出資する企業が来春の着工を目指している研修牧場では、集中型BGPを2020年9月ごろに着工する予定だ。
同構想は「近代酪農発祥の地・八雲町の持続的発展」をテーマとし、10月31日付で選ばれた。酪農経営戸数の減少や堆肥舎の容量不足といった課題の解決が目的。町は北海道新幹線の仮称・新八雲駅を牧場地帯に配置する方針を掲げていて、臭気対策も必要となっている。
柱となるBGPは、家畜ふん尿を発酵させて発電などに使えるメタンガスを精製し、液体と固体に分ける。液体は肥料として、固体は家畜用の敷料として活用する。発酵の過程で臭気や不純物を除去できるため、周囲への臭気の低減や良質な肥料の生産などが見込める。
整備する4基のうち、最大となる集中型BGPは町と新函館農業協同組合、近隣農家の出資で6月に設立した株式会社青年舎が上八雲地区への整備を目指す研修牧場内に配置する。事業主体は青年舎。
このプラントでは、研修牧場分(約600頭)と近隣の酪農家2戸分(約40頭)を合わせて約640頭分の家畜ふん尿を処理する計画。トラックスケール、原料槽、発酵槽、バイオガス精製装置、発電機、殺菌槽、消化液貯留槽、再生敷料製造施設などで構成し、発電出力は190㌔㍗を見込む。建設費は5億円程度。
着工は20年度初頭を想定する研修牧場の畜舎新築の着工後としていて、9月ごろを見込む。設計や工事は青年舎が発注するが、発注方法や時期などは検討中だ。ふん尿の堆積と発酵などが必要になるため、始動は22年度を予定とする。
残る3基のBGPは、地元酪農家のふん尿を処理する。17年度に実施した酪農家への意向調査を踏まえたもので、現時点ではそれぞれ出力50㌔㍗級となる見込み。
今後、設置・運営主体などを検討し、地元合意を得た上で23年度以降の着工を想定している。将来的にはバイオガスから水素を取り出して活用する脱炭素社会の構築を目指す考えだ。
(北海道建設新聞2019年11月9日付11面より)