ノボシビルスク通信

ノボシビルスク通信 「スマートシティ」計画進行中

2019年11月17日 09時00分

 【ノボシビルスクIDA】ノボシビルスク市で、まちづくりに高度なIT・デジタル技術を取り入れる「スマートシティ」計画が進行中だ。スマートシティは、ロシア政府が国家プロジェクトとして推進する事業の一つ。主に国営、民営の企業群、また地方自治体が資金を出し、ハードとソフトの両面で整備を始めている。

スマート化するロシアの都市

 ノボシ市は国の政策に沿って、多くの市民がまちづくりの課題解決に関わるようなデジタルプラットフォームを2024年までに開発する計画を打ち出している。近年はデジタル技術の発達により、建物、工場など全ての構造物をコンピューターモデリングでデータ化することが可能になっている。これを利用して、デジタルで仮想ノボシ市をつくる。

 そして、現実の街の至る所に多様なセンサー類を仕掛け、街の状況が随時システムに反映されるようにする。何か問題があれば、街のデジタルモデル上でシミュレーションしながら変更や改善方法を検討することができる。

 計画のうち、いくつかの取り組みが始まっている。代表例が「私のノボシビルスク」と称する地理情報システムだ。スタートは12年。専用サイトやスマートフォンアプリがあり、画面の地図上に、温水、ガスなどインフラ供給システムに関する休止・再開情報が随時公開される。

「私のノボシビルスク」サイトのキャプチャー

 また、公共設備の故障などについて住民から市に報告できる窓口機能もある。このシステムを通して報告された問題・苦情は、導入初年度は600件だったが、18年には1万1000件まで増えた。内容は主に住宅サービス、道路、土地整備に関するものだった。

 また、墓地管理システム「ノボシビルスクの墓地」というサービスも始まった。公開ページと管理ページに分かれ、公開ページでは市民が親戚や知人の墓の場所を調べられる。管理ページは市の墓地管理担当者や民間の葬儀業者向けで、墓の登録、また書類の管理がスムーズにできる。

 このところ市民の間で話題になっているのが、「スマートバス停」プロジェクトだ。このバス停にはタッチパネル式のスマートスクリーンが設置されていて目的地へのルートを調べられる上、必要な公共交通機関の運航情報も得られる。交通だけでなく、街の観光情報やニュース、また市内の企業、施設も検索できる。無料Wi―Fiが使え、スマホの充電も可能だ。一部では緊急時のための救急車呼び出しなどの機能も備える。中には銀行のATMを備えたバス停もある。

信号機や学校も「スマート化」

 ノボシ市内5カ所にスマートバス停が設置されている。1カ所当たりの開設費用は約250万ルーブル(約430万円)。民間企業2社が負担し、この2社はバス停の看板やスクリーンをPR媒体として活用している。

タッチ式情報パネルを備えた「スマートバス停」

 スマートバス停ではビデオ監視システムが常時作動していて、人の顔や不審物を識別することができ、安全確保や犯罪防止に役立っている。今後、市内を走っているバスに、次のバス停で待っている人の数を知らせる仕組みを導入する予定だ。

 こうしたバス停拡大の追い風となるのが、ノボシ市で2023年に開催を予定しているアイスホッケー・ジュニアワールドカップだ。世界中の選手や関係者、観客を受け入れるため、ノボシ市は現在、市街地の整備を進めている。この一環で、市はスマートバス停を約200カ所に増やす方針を打ち出している。

 ワールドカップ開催の前に、「スマート信号機」を開設する構想もある。街を走る自動車の量やスピードをコンピューターで自動分析し、信号機が切り替わるタイミングを最適な間隔に調整するシステムだ。目下、スタンツィオンナヤ通という幹線道路の信号機10台に導入し、実証実験をしているところだ。

 この一帯は工場や倉庫、物流施設などが集積し、市内で最も渋滞の激しいエリアの一つとして知られている。実験の中間報告によれば、当該区間では車が赤信号などで一時停止する回数が47%減り、走行スピードは平均19%速くなった。システムの効率の高さが示されている。

 さらに、「スマート学校」計画も控えている。前段階として今冬から、ノボシ市立の実験校に、省エネ目的で地熱暖房システムを導入する。その次のステップで、施設内の状況を常時モニターし、制御するシステムを取り入れる。セキュリティーの管理はもちろん、水漏れ、暖房や電気器具の消し忘れなどを自動で知らせることができるようになる。校内の気温もシステムで自動管理されるため、年間の暖房費を30%節約することができるようになる。

 日本は街や施設のスマート化に関して高い技術を持つ国だ。直近2年の間に、北海道からもIT、デジタル技術に関わる企業がノボシ市を訪れた。ノボシは州も市も、まちづくりにおける北海道企業との協業に期待している。

(この記事は北海道建設新聞2019年11月5日付1面、4面に掲載された記事をWEB公開にあたり再構成しました)


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